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睡眠・覚醒 Sleep/Awake

睡眠・覚醒の生理学

・睡眠・覚醒がどのように調節されているのか?を簡単に模式図にしたもの下図です。脳幹網様体が覚醒を担う解剖として重要で、覚醒を担うホルモンにはヒスタミン、セロトニン、ノルアドレナリン、アセチルコリンなどが挙げられます。
・一方で睡眠を担うのは視床下部前部(視索前索)GABAがホルモンとして働きます。
・覚醒と睡眠はそれぞれ相互に互いを制御(抑制)しあっており、覚醒に傾いているときは睡眠は抑制され、睡眠に傾いているときは覚醒が抑制されています。
・これらの調整を行う司令塔が視床下部にあるオレキシンです。オレキシンが作用すると覚醒に傾くように調整されます。

・この視床下部・オレキシンに影響を与える要素は大きく3つあり1:辺縁系(情動・ストレス)、2:視交叉上核(光)、3:栄養状態(飢餓状態)です。
・覚醒においては上記が関与してオレキシン分泌を促すことで覚醒が維持されます。ストレスがかかっている状態や光を浴びてまぶしい状態、またおなかが空いている状態で覚醒が起こるのはイメージしやすいと思います。


・また逆にリラックスしている状態やくらい状態、おなかいっぱいの状態ではオレキシンは抑制され睡眠に傾くことになります。この点も理解しやすいと思います。

・ではこの睡眠と覚醒が何をきっかけに切り替えているか?に関しては古くから”2 process model”というものが仮説として提唱されています。ここではProcess C(概日リズム:時間がくると眠くなる)とProcess S(睡眠負債:長時間寝ていないと眠くなる)の2つのシステムが作用することによって睡眠と覚醒が切り替えられるという仮説です。ただこの点はまだ完全に分かっていません。

REM睡眠とnon-REM睡眠

・各種ホルモンや状態とnon-REM睡眠・REM睡眠の関係は下図の通りです。

・まずREM睡眠ですが、REM睡眠は筋緊張が低下して非常に無防備な状態です。本来自然環境で危険から身を守るためにはこの簡単にREM睡眠に突入してしまっては困るためこのREM睡眠はノルアドレナリンやオレキシンなどのホルモンが強力に抑制しています。こうすることで簡単にREM睡眠に入らないようになっています。ちなみにこのオレキシンが欠乏することで突然REM睡眠に入ってしまう病態がナルコレプシーです。入眠時幻覚や睡眠麻痺、カタプレキシーを生じてしまいます。
・もう1つのREM睡眠の特徴は「鮮明な夢を見る」という点で、アセチルコリンにより大脳皮質活動は覚醒時と同じように賦活化しており夢を見ます。ただ夢の通りに体が勝手に動いてしまわないのは脳幹部で運動経路がシャットダウンされているためです(筋緊張は低下している)。ちなみにこの状態で筋緊張を制御する経路が障害される病期がレム睡眠行動異常症です(こちら)。
・このnon-REM睡眠、REM睡眠がそれぞれ体にどのような良い効果をもたらしているか?に関してまだ解明されていませんが、REM睡眠が低下すると総死亡が上昇するというデータ(下図)がありREM睡眠が重要であることは間違いありません。

参考文献
・睡眠の科学・改訂新版 なぜ眠るのか なぜ目覚めるのか (ブルーバックス) 著:櫻井武先生