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RBD: REM sleep behavior disorder REM睡眠行動異常症

睡眠時随伴症 Parasomnia

“parasomnia”:睡眠中にするべきではない行動をやってしまうこと(単純な行動)
→一般的にNREM睡眠とREM睡眠どちらで起こるか?によって分類する

NREM睡眠に関連するパラソムニア

・覚醒障害 disorders of arousal
・錯乱性覚醒 confusional arousals
・睡眠時遊行症 sleep walking
・夜驚 sleep terrors
・睡眠関連接触異常症 sleep related eating disorder

*いずれも小児期に多く基本的には予後良好な場合が多い(年齢が上がるにつれ一般的にNREM睡眠の比率は減少することとも関係)

REM睡眠に関連するパラソムニア

REM睡眠:大脳皮質は活動している状態であるが、橋延髄レベルで運動経路がシャットダウンされているため(今橋の青斑下核・延髄の巨大細胞性網様核の関与が指摘)、筋緊張は低下(atonia)している(この経路が障害されるのが”RBD”)。また「夢を見る」ことが特徴。通常REM睡眠はこのようにとても無防備な状態なので、強く抑制されている状態である。
*通常はNREM睡眠を経由してからREM睡眠に入り、いきなりREM睡眠を呈する訳ではない(ちなみにこの経路が障害されるのがナルコレプシー)。REM睡眠を「深い」「浅い」と表現することはできない。
*REM睡眠の状態で急に覚醒すると「夢」を覚えている状態。

REM睡眠行動異常症 RBD

上記の通りREM睡眠中の筋活動が抑制されない(REM sleep without atonia: RWA)状態なので、夢の通りに行動します。ベッドパートナーからの問診が何よりも診断においては重要となります。スクリーニング問診票としては以下のRBDスクリーニング問診票日本語版が有名です。

RBDQ-JP:RBDスクリーニング問診票日本語版

1:とてもはっきりした夢をときどき見る
2:攻撃的だったり、動きが盛りだくさんだったりする夢をよく見る
3:夢を見ているときに、夢の中と同じ動作をすることが多い
4:寝ている時にうでや足を動かしていることがある
5:寝ている時にうでや足を動かすので、隣で寝ている人にけがを負わせたり、自分がけがしたりすることがある
6:夢をみているときに以下のできごとが以前にあったり、今もある
 6・1:誰かとしゃべる、大声でどなる、大声でののしる、大声で笑う
 6・2:うでと足を突如動かす/けんかをしているように
 6・3:寝ている間に、身振りや複雑な動作をする(例:手を振る、挨拶をする、何かを手で追い払う、ベッドから落ちる)
 6・4:ベッドの周りの物を落とす(例:電気スタンド、本、眼鏡)
7:寝ている時に自分の動作で目が覚めることがある
8:目が覚めた後、夢の内容をだいたい覚えている
9:眠りがよく妨げられる
10:以下のいずれかの神経系の病気を以前わずらっていたまたは現在患っている(例:脳卒中、頭部外傷、パーキンソン病、Restless legs症候群、ナルコレプシー、うつ病、てんかん、脳の炎症性疾患)

上記5点以上/13項目をRBDの疑いと判断 Sleep Med 2009;10:1151
RBDと健常者の鑑別:感度88.5%, 特異度 96.9%
RBDと睡眠時無呼吸(CPAP使用):感度88.5%, 特異度 90,9%

確定診断

PSG(polysomnography)が必要

αシヌクレイノパチー合併

・パーキンソン病、レヴィ小体型認知症、MSA
・idiopathic RBDはその後長期経過でαシヌクレイノパチーへと伸展する場合があり注意が必要。高齢者のiRBDはこの点が最も問題となる。
・レヴィ小体型認知症では診断基準の中核的特徴にRBDが、また指標的バイオマーカーにPSGでの筋緊張低下を伴わないREM睡眠の確認が含まれている(こちらを参照)

*レヴィ小体病理は迷走神経背側核から脳幹を上行していく経路が推定されているため、途中の青斑核(橋・ノルアドレナリン)は覚醒に関与する部位なので、同部位が障害されることでRBDが初期から出現する機序が考えられます(まだ確定的ではないですが)。下図はCell Tissue Res (2004) 318: 121 – 134より引用。

治療

対症療法 クロナゼパム第1選択として使用する場合が多い

一般名:クロナゼパム clonazepam(CZP)
商品名:リボトリール、ランドセン 作用機序:GABA受容体作動(ベンゾジアゼピン系)
製剤:0.5mg, 1mg, 2mg/錠
処方量:0.5~2mg 1日1回眠前内服 *通常はまず0.25~0.5mgから開始し、それで著効する場合も多い印象
半減期:1mg=27時間 *翌朝持ち越しや高齢者のふらつきなどに注意が必要
*閉塞隅角緑内障は禁忌該当事項なので注意が必要

管理人は恥ずかしながらいままでPSGの研修を受けたことがないため、この領域がとても苦手です・・・。PSGのご経験ある先生いらっしゃいましたら是非色々ご教授いただきたいです。

参考文献
・「極論で語る睡眠医学」 著:河合真先生 余談ですが私は研修医のときに大船中央病院で河合先生がたまたま日本に戻っておられレクチャーをされたのに参加したことがあり、とても熱量のある素晴らしいレクチャーで感動した記憶があります。