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不眠症へのアプローチ 睡眠衛生指導

不眠症へのアプローチで最も重要なのはまずは非薬物療法で特に睡眠上の注意点を教育する睡眠衛生指導が重要です。ここでは重要なポイントを列記していきます。

眠への誤解を解く

・絶対に何時間寝ないといけない、絶対に90分周期にしないといけないといった誤解を患者さんが持っている場合があるためこの点は教育が必要です。
・下図は有名な図ですが、加齢と共に総睡眠時間は短縮し、中途覚醒が増加し、REM睡眠は減少していきます。これは生理的な現象なので、「若いときのように眠れない」とストレスに感じる必要はないことを充分説明します。

・実際に睡眠時間の推奨も加齢に伴い短くなっていきます。

寝室の環境:暗さ・静か(テレビ×)・室温(夏はエアコン使用)

・テレビをつけながら寝る人は多いと思いますが人の声は環境音より睡眠に悪影響です。またテレビの明かりがちかちかすることも睡眠に悪影響なので必ず避けるべきです。
・体温に関してですが、我々は深部体温が下がるタイミングで最も眠くなります。深部体温を下げるには皮膚血流を増加させて皮膚の毛細血管から熱を放散することが重要です。
・このため就寝前に入浴して深部体温が少し上がり末梢毛細血管の血流量が増加した状態は眠りにつきやすくなります。
・靴下を履いて寝るのは熱放散を妨げるため深部体温を低く維持する点で良くないとされています。湯たんぽに関しても同様で入眠時には深部体温を低く維持するために有用ですが、寝る前だけにとどめる方が良いです。

・次に室温に関してです。特に夏場のエアコンに関してご高齢の方で使用されたくない方も多いと思いますのできちんとデータから考える必要があります。今までの研究から熱くても寒くても睡眠の質が悪くなることが知られています。(21℃, 24℃, 29℃, 34℃, 37℃の比較では29℃が最も良い)Electroencephalogr Clin Neurophysiol. 1981 May;51(5):494-501.
・また夜間「ずっと」涼しい環境の方が睡眠の質が保たれることも指摘されています。 Int J Biometeorol. 2005 Mar;49(4):232-7.
・これらのことから少なくとも夏場に暑い環境で寝ることは睡眠にとっては悪影響であることが分かります。このためエアコンで室温を調整することは睡眠にはとても有用です。具体的な温度設定に関して決まりはなく個人差もありますが、26~28℃くらい良いかと思います。
・ただ強い気流は睡眠の質を下げると指摘されています。このため扇風機はあまり睡眠において得策ではありません。
・このため具体的にはエアコンの風が直接体に当たらないようにする(例えば別の部屋でエアコンをつけて直接体に風が当たらないようにする)ことが重要です。

食事:規則正しい食事 *眠前に食べすぎは避ける

カフェイン:就寝6時間以内避ける

・カフェインが睡眠に悪影響であることはよく知られていると思います。カフェインの半減期は約4~6時間とされていますが、実際にはカフェインの代謝には個人差が大きいため就寝する6時間前にカフェインを接種しても睡眠の質が悪化したという報告もあります。このため就寝時間にもよりますが、夕方以降のカフェイン摂取は控えるべきです。
・カフェインを含有しない飲み物としては穀物由来の飲み物があり、具体的にはそば茶、麦茶、ルイボスティーなどが挙げられます。

*参考 カフェインに関して
・作用機序:アデノシン(睡眠を促す作用がある)受容体阻害
・代謝産物:paraxanthine 80%, theobromine/theophylline 16%
・半減期: 4~6時間*就寝6時間前の摂取でも睡眠の質悪化 J Clin Sleep Med 2013;9(11):1195-1200.
代謝の個人差:年齢・性別・体重・遺伝的要素など
・依存性:離脱症状として眠気→眠気を覚ますためにカフェイン摂取→また離脱症状という悪循環に陥るリスク
・睡眠への影響:睡眠潜時延長, 総睡眠時間短縮, 自覚症状悪化(日中の集中力を上げる作用は睡眠障害により相殺される可能性)

アルコール:睡眠導入は早くなるが、睡眠の質は悪化

・アルコールは少量であったとしても睡眠の質を低下させることが指摘されているため注意が必要です。確かに睡眠潜時を早めることは出来ますが、睡眠の質自体はアルコールにより低下する点に注意が必要です。
・特にSASの患者さんではアルコールによる筋弛緩作用により気道抵抗がより上昇してしまうためより注意が必要です。

喫煙:夕方以降は禁煙

・これも意外かと思われるかもしれませんがニコチン自体覚醒物質として作用するため夕方以降は禁煙します。

眠い時だけベッドに行く

ベッドを睡眠のためだけに使うことが重要で、テレビを見るのは先述の通り最も良くない行動です。
・長時間ベッド上で過ごさない、20分経過して寝付けなかった場合は別の部屋に移動し眠くなったら寝室に行くといった点も重要です。

起床時間統一

・何時に寝るか?何時間寝るか?にこだわり過ぎないことが重要でまずは起床時間を統一することが重要です。

昼寝を避ける・朝太陽光を浴びる:概日リズムを保つ

規則的な運動:有酸素運動(特に朝・夕方)

・寝る直前の運動は避ける方が望ましいとされます。

ブルーライト:就寝前スマートフォンやパソコンを避ける

・10~20歳代の不眠において特に問題となるのがこの点です。スマートフォンやSNSは中毒性が高いのでベッドまで持ち込んで部屋の電気を落とした後も見続けることがありますがこれは睡眠には悪影響です。