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特発性全般てんかん idiopathic generalized epilepsy

JMEは神経内科医はよく診療すると思います。その他のより若年のてんかんに関しては私はあまり経験がないのですが、”transition”の関係で外来での勉強が必須となってきており、教科書的内容をまとめています。ポイントをご存じの方がいらっしゃりましたら是非ご教授いただきたいです。
*2017年ILAEから“idiopathic generalized epilepsies: 特発性全般てんかん”“genetic generalized epilepsy”の名称へ変更

特発性全般てんかんの特徴

・一般的に脳波背景活動正常(間欠期てんかん性放電)
・MRI正常
・知能も原則正常
・24歳頃までに初発
・遺伝子検査は陰性(複数の要素が関与している、典型的な遺伝形式をとらないことも多い)

臨床像

①強直間代発作 GTCS
②ミオクロニー発作 myoclonic seizure:不規則なぴくつき、短い、単発(群発する場合もある)、左右非対称の場合が多い
③欠神発作 absence:10-60秒程度ぼーっと固まり眼はうつろな状態

発症年齢と特発性全般てんかん

脳波:全般発作(generalized seizure)のミオクロニー発作(myoclonic seizure)の脳波polyspike and wave, 欠神発作(absence seizure)の脳波spike and waveは発作時(ictal)と発作間欠時(interictal)の脳波所見が同じである点が特徴的。脳波上短い持続時間の場合は発作時なのか?発作間欠期なのか?の判断ができない。
3秒以上持続すると意識が減損する(時間が違うだけであり、その他で発作時か発作間欠期かは判断できない)

小児欠神てんかん CAE: childhood absence epilepsy

年齢:4-10歳に発症(ピークは5-7歳) 年齢依存性 *16歳未満のてんかんの10-12% *遺伝的素因あり
発達:正常
臨床像:定型欠神発作
・突然はじまり、突然終わる
・持続時間:4-20秒(通常は10秒前後)
・発作中:随意運動が停止・自動症を伴う場合あり・目は凝視して不規則な瞬目を伴う場合あり(自覚はなく、周囲からの呼びかけに反応はない)*倒れることはない
・短時間かつ頻回(数十回/日の場合あり)
*定型欠神発作を発症する前や同時期にGTCSやミオクロニー発作を認めることは通常ない
誘発因子:通常自然と出現・過呼吸 *光で誘発されることはほとんどない

脳波:典型的にはHV誘発による3Hz spike and wave complex (持続時間10-12秒*4~20秒のことがほとんど)・背景活動正常

経過
・通常は12歳頃までに寛解する
・思春期に全般強直間代発作が出現することもある 発言頻度は少ない

治療
・ESM, VPA, LTG

若年欠神てんかん JAE: juvenile absence epilepsy

年齢:12-18歳(10-12歳がピーク)
知能:正常
臨床像:欠神発作
・頭部の後屈運動、眼瞼ミオクローヌス、自動症を伴う頻度が少ない *JMEと似るがミオクローヌスの有無が臨床上の鑑別点
・意識障害の程度が軽く、反応性が保たれる
・持続時間が長い
・発作頻度は少ない(日に数回以下)
・GTCSを80%程度に合併し、起床後に起こることが多い
*JMEに似るがmyoclonic seizureを伴わない点が異なる

脳波:3Hzよりも少し速い周波数でのSpike and wave complex・過呼吸により誘発

経過:治療反応性は良好(JMEよりも予後やや不良)・小児欠神てんかんよりも寛解率は低い・中止後の再発が多い

治療:VPA 1st choice→ESM, LTG

若年ミオクロニーてんかん JME: juvenile myoclonic epilepsy

年齢:12-18歳
*てんかん全体の5-10%, 特発性全般てんかんの20-25%(最多)であり思春期~成人てんかんの代表的なてんかん症候群である
知能:正常
臨床像
・ミオクロニー発作:起床直後覚醒時(覚醒後30分~数時間以内)に両上肢(または左右差が明確)
*睡眠との関係性が明確である点がポイント(睡眠関連てんかんに関してはこちら参照) 睡眠不足で悪化が多い
*「朝おちゃわんを落とす・味噌汁をこぼす」など 病歴聴取で朝物を落とすことはないですか?
*指が少しだけ動くような軽微な症状もある (下肢をまきこみ転倒にいたることはuncommon)
*左右差が目立つと焦点起始発作と間違えられる場合がある(ここでCBZが処方されると増悪するため良くない)
・GTCS:80-95%(ほぼ全例) *ここから診断に至ることが多い
・欠神発作:10-25% 欠神発作が先行するとCAE, JAEと診断される場合もある
誘因:①睡眠不足、②飲酒、③光、精神的ストレス、情動変化
*年齢から特にこれらの誘因にさらされやすい

脳波:polyspike and wave complex・光突発反応(約30%)
*間欠脳波の異常検出 75%

診断基準 ”Consensus on diagnosis and management of JME: From founder’s
observations to current trends” Epilepsy Behav 2013;28(suppl 1):S87-S90.
JME class1
①ミオクロニー発作(意識消失を伴わない)、起床後2時間以内に繰り返し生じる
②EEG ictal, generalized high amplitude, polyspike and waves + ミオクロニー発作を伴う
③知能正常
④発症年齢が10-25歳

JME class2
①ミオクロニー発作が起床後を主体に生じる
②ミオクロニー発作が睡眠不足やストレス、光刺激により誘発される、GTCSに先行する
③EEG:interictal spike/polyspike and waves (ミオクローヌスは伴わなくとも良い、多少の左右差許容)
④精神発達遅滞なし
⑤発症年齢が6-25歳

経過
・薬剤で90%以上はコントロール良好になる
断薬により発作が再発することが多い(約90%)

*”Relapse after treatment withdrawal of antiepileptic drugs for Juvenile Absence Epilepsy and Juvenile Myoclonic Epilepsy” 薬剤中断後の再発に関して 後ろ向きコホート研究 Seizure 2018;59:116-122.
・JAE(n=36) 中止再発 100%(6/6) vs 中止しない再発 25%
・JME(n=145) 中止再発80%(8/10) vs中止しない再発 36%

治療
1st choice: VPA(バルプロ酸に関してはこちら参照) 80%はコントロール Lancet Neurol. 2016;15(2):210.
→LEV, LTG, TPM, ZNS  *男性はVPAから、妊娠可能年齢女性の場合はLEV, LTGから
*全般性てんかんに対してバルプロ酸はラモトリギンよりも有用性高く、トピラマートよりも耐用性が高い Lancet. 2007;369(9566):1016.
カルバマゼピン、フェニトインのNa遮断薬は増悪させるため使用を避ける
*調子が悪い日のみクロナゼパムを頓用で使用するという方法がある

JMEの治療抵抗性に関して”Clinical factors of drug resistance in juvenile myoclonic epilepsy” J Neurol Neurosurg Psychiatry 2001;70:240–243.
・155例のJME検討(発症14.5歳)
・治療反応性良好 74.8%, ture-resistant 15.5%, pseudo-resistant 9.7%
*pseudo-resistantが一定数ある:適切な薬剤ではない(バルプロ酸ではない)、アドヒアランス不良、睡眠不足などの生活問題→治療抵抗例ではまずはこれらの問題の可能性を考慮する
*true-resistantの要素①精神的問題、②発作型3つ混在
*カルバマゼピン/フェニトイン投与(n=40):増悪 68%/38%, 変化なし 18%/50%

全般強直間代発作のみを示すてんかん generalized tonic-clonic seizures alone(旧:覚醒時大発作てんかん generalized tonic-clonic seizures on awaking)

年齢:10歳代に発症する(6-28歳と幅広い) 比較的高齢
時間帯:覚醒後2時間以内、午後夕方のリラックスした時間帯
誘因:睡眠不足、疲労、飲酒、光刺激

脳波:光感受性

経過:良好・薬剤での発作完成抑制60%強・減薬や中止による再発60%

治療:VPA 1st choice, 2nd ine LTG, LEV, TPM, ZNS, CLB

文献
・特発性全般てんかんに対するレベチラセタムのadd on therapyは効果ある(>50%以上のresponder) JAE 53.3% vs placebo 25.0%, JME 61.0% vs 24.7%, GTCSA 61.9% vs 29.6% Epilepsy Res. 2009 Jul;85(1):72-80. Levetiracetam as add-on therapy for idiopathic generalized epilepsy syndromes with onset during adolescence: analysis of two randomized, double-blind, placebo-controlled studies.

参考文献
・てんかん専門医ガイドブック改訂第2版 編集:日本てんかん学会
・CONTINUUM (MINNEAP MINN)2022;28(2, EPILEPSY):339 – 362.