JMEは神経内科医はよく診療すると思います。その他のより若年のてんかんに関しては私はあまり経験がないのですが、”transition”の関係で外来での勉強が必須となってきており、教科書的内容をまとめています。ポイントをご存じの方がいらっしゃりましたら是非ご教授いただきたいです。
発症年齢と特発性全般てんかん

脳波:全般発作(generalized seizure)のミオクロニー発作(myoclonic seizure)の脳波polyspike and wave, 欠神発作(absence seizure)の脳波spike and waveは発作時(ictal)と発作間欠時(interictal)の脳波所見が同じである点が特徴的。脳波上短い持続時間の場合は発作時なのか?発作間欠期なのか?の判断ができない。
小児欠神てんかん CAE: childhood absence epilepsy
年齢:4-10歳に発症(ピークは5-7歳) 年齢依存性 *16歳未満のてんかんの10-12% *遺伝的素因あり
発達:正常
臨床像:定型欠神発作
・突然はじまり、突然終わる
・持続時間:4-20秒(通常は10秒前後)
・発作中:随意運動が停止・自動症を伴う場合あり・目は凝視して不規則な瞬目を伴う場合あり(自覚はなく、周囲からの呼びかけに反応はない)*倒れることはない
・短時間かつ頻回(数十回/日の場合あり)
*定型欠神発作を発症する前や同時期にGTCSやミオクロニー発作を認めることは通常ない
誘発因子:通常自然と出現・過呼吸 *光で誘発されることはほとんどない
脳波:典型的にはHV誘発による3Hz spike and wave complex (持続時間10-12秒*4~20秒のことがほとんど)・背景活動正常
経過
・通常は12歳頃までに寛解する
・思春期に全般強直間代発作が出現することもある 発言頻度は少ない
治療
・ESM, VPA, LTG
若年欠神てんかん JAE: juvenile absence epilepsy
年齢:10-17歳(10-12歳がピーク)
知能:正常
臨床像:欠神発作
・頭部の後屈運動、眼瞼ミオクローヌス、自動症を伴う頻度が少ない
・意識障害の程度が軽く、反応性が保たれる
・持続時間が長い
・発作頻度は少ない(日に数回以下)
・GTCSを80%程度に合併し、起床後に起こることが多い
脳波:3Hzよりも少し速い周波数でのSpike and wave complex・過呼吸により誘発
経過:治療反応性は良好・小児欠神てんかんよりも寛解率は低い・中止後の再発が多い
治療:VPA 1st choice→ESM, LTG
若年ミオクロニーてんかん JME: juvenile myoclonic epilepsy
年齢:12-18歳 てんかん全体の5-10%, 特発性全般てんかんの20-25% 思春期~成人てんかんの代表的なてんかん症候群
知能:正常
臨床像
・ミオクロニー発作:起床直後覚醒時(覚醒後30分~数時間以内)に両上肢(または左右差が明確)
*睡眠との関係性が明確である点がポイント(睡眠関連てんかんに関してはこちら参照) 睡眠不足で悪化が多い
*「朝おちゃわんを落とす・味噌汁をこぼす」など 病歴聴取で朝物を落とすことはないですか?
*指が少しだけ動くような軽微な症状もある (下肢をまきこみ転倒にいたることはuncommon)
*左右差が目立つと焦点起始発作と間違えられる場合がある(ここでCBZが処方されると増悪するため良くない)
・GTCS:80-95%(ほぼ全例) *ここから診断に至ることが多い
・欠神発作:10-25% 欠神発作が先行するとCAE, JAEと診断される場合もある
誘因:睡眠不足、疲労、飲酒、精神的ストレス、情動変化
脳波:polyspike and wave complex・光突発反応(約30%)
*間欠脳波の異常検出 75%
経過
・薬剤で90%以上はコントロール良好になる
・断薬により発作が再発することが多い(約90%)
治療
1st choice: VPA 80%はコントロール Lancet Neurol. 2016;15(2):210.
→LEV, LTG, TPM, ZNS *妊娠可能年齢女性の場合はLEV, LTG
*全般性てんかんに対してバルプロ酸はラモトリギンよりも有用性高く、トピラマートよりも耐用性が高い Lancet. 2007;369(9566):1016.
*カルバマゼピン、フェニトインは増悪させるため使用を避ける
*調子が悪い日のみクロナゼパムを頓用で使用するという方法がある
全般強直間代発作のみを示すてんかん generalized tonic-clonic seizures alone(旧:覚醒時大発作てんかん generalized tonic-clonic seizures on awaking)
年齢:10歳代に発症する(6-28歳と幅広い) 比較的高齢
時間帯:各制度2時間以内、午後夕方のリラックスした時間帯
誘因:睡眠不足、疲労、飲酒、光刺激
脳波:光感受性
経過:良好・薬剤での発作完成抑制60%強・減薬や中止による再発60%
治療:VPA 1st choice, 2nd ine LTG, LEV, TPM, ZNS, CLB
文献
・特発性全般てんかんに対するレベチラセタムのadd on therapyは効果ある(>50%以上のresponder) JAE 53.3% vs placebo 25.0%, JME 61.0% vs 24.7%, GTCSA 61.9% vs 29.6% Epilepsy Res. 2009 Jul;85(1):72-80. Levetiracetam as add-on therapy for idiopathic generalized epilepsy syndromes with onset during adolescence: analysis of two randomized, double-blind, placebo-controlled studies.
参考文献
・てんかん専門医ガイドブック改訂第2版 編集:日本てんかん学会