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SPECT single photon emission computed tomography

原理

放射性同位元素
・陽電子(positron)→陽電子放出断層撮像法(PET: positron emission tomography)
・単光子(single photon)→ 単光子放出コンピューター断層撮像法(SPECT: single photon emission computed tomography) *感度と空間分解能が低い点が問題である

SPECTでの放射性医薬品
99mTc(テクネシウム):半減期6時間
123I(ヨウ素):半減期13時間

*被ばく量に関してはこちらのリンク先もご参照ください。

各論

脳血流SPECT

こちらをご参照ください。

123I-FP-CIT SPECT (DaTSCAN)

原理・機序
・核種:イオフルパン(ioflupane)
・シナプス間隙に放出されたドパミンはドパミントランスポーター(DAT: dopamine transporter)を介して回収されます。黒質線条体ドパミン神経の終末部にDATは高発現しており、パーキンソン病やレビー小体型認知症などではこのドパミン神経が変性するため同部位の集積が低下します。
*当たり前ではありますがdopamineという神経伝達物質を直接調べているわけではない点に注意が必要です。

方法:静注後3~6時間後に撮像 *正常例では両側線条体に三日月状集積を認めます

事前休薬:SSRI・中枢神経刺激剤(メチルフェニデート)・TCA(アモキサピン)・コカイン・中枢興奮剤(メタンフェミン)・モダニフィル・オピオイド・麻酔薬(ケタミン・イソフルラン)
*パーキンソン病治療薬は通常休薬必要なし・また抗精神病薬(リスペリドン・ハロペリドール)は休薬必要なし

適応:最も良い適応は薬剤性パーキンソン症候群と潜在性のパーキンソン病との鑑別(薬剤性パーキンソン症候群に関してはこちらをご参照ください)と個人的には考えています。これはどうしてもclinicalな情報だけでは鑑別しきれないからです(薬剤性パーキンソン症候群でも症状が非対称になることあります!)。
基本的にパーキンソン病は臨床診断であり、clinicalに明らかなパーキンソン病に対して本検査を実施する必要はないと個人的には考えています(もちろんMDS diagnostic criteria 2017にも診断の必要条件には組み込まれていません)。「tremor onsetでessential tremorとの判断に悩む場合」や「一度パーキンソン病と診断したが、経過がパーキンソン病と非典型的な場合で診断を再考する必要がある場合」などに有用と思います。
*また集積の仕方によりパーキンソン症候群内での鑑別が出来るとしている文献もありますが(そのような先生もいらっしゃいますが)、筆者はその目的で使用することはありません(基本的に鑑別出来ないと考えています)。
*またまたこれも個人的な考えですが、パーキンソン症候群関連の診断は「検査に軸足を過度に置きすぎて臨床情報を軽視すると容易に誤診する」と個人的に思っています。

*参考:日本メジフィジックス株式会社のDaTSCANに関するホームページのリンクを掲載させていただきます

201Tl SPECT

原理・機序
基礎知識1:Tl(Thallium)はKのアナログとしてNa-K ATPaseにより細胞内へ取り込まれる(Kの3.5倍の透過性を持つ)ため、細胞の活動性の指標となる
基礎知識2:BBBを通過することはない
→このためBBBが破綻し細胞の活動性が高い状態で取り込まれる。具体的には悪性腫瘍で取り込まれるため、脳腫瘍評価の指標となる(その他脳膿瘍や炎症性病変でもこの原理により取り込まれて悪性腫瘍に特異的な訳ではない点に注意)
*影響を受ける因子:腫瘍の悪性度・局所血流量・BBBの破綻・局所の炎症反応
*日本ではTlのみが脳腫瘍診断にできるSPECT核種として保険適用

方法:静注投与後早期像(5~30分後)+後期像(3時間後)

評価
早期像:血流量を反映 髄膜腫・転移性脳腫瘍・悪性リンパ腫で強い取り込み
後期像:髄膜腫・神経鞘腫でwash outを認める *早期像のみでは悪性度判断困難

IMZ SPECT

原理・機序
123I-iomazenil(IMZ)は中枢性ベンゾジアゼピン受容体の分布を画像化したもの
・てんかん原性部位は低集積領域として画像化→注意点:SPECTはあくまで補助診断でこの検査結果をもって手術を行うことはしない(SPECT oriented focus resectionはない)

参考文献
・臨床医・RI技師のための脳SPECTパーフェクトガイド MCメディカ出版