緊張型頭痛はもちろんそれ単独でも重要なのですが、「本当に片頭痛ではないか?」という臨床姿勢が最も重要と個人的には考えています。
分類
ICHD-3における筋緊張型頭痛の分類 *参考 反復性 episodic:14日/月以下、慢性 chronic:15日/月以上
2.1 稀発反復性緊張型頭痛 1回/月未満
2.2 頻発反復性緊張型頭痛 1~14回/月
2.3 慢性緊張型頭痛 15日/月以上(3か月を超えて)
A:発作頻度による分類は上記3つから選択
B:頭痛は30分~7日間持続する
C:以下の特徴を少なくとも2項目満たす
・両側性
・性状は圧迫感または締め付け感(非拍動性)
・強さは軽度~中等度
・歩行や階段昇降のような日常的動作により増悪しない
D:以下の両方を満たす
・2.1 or 2.2(反復性)の場合:悪心や嘔吐はない・光過敏や音過敏はあってもどちら一方のみ
・2.3(慢性)の場合:光過敏、音過敏、軽度の悪心はあってもいずれか一つのみ・中等度の悪心や嘔吐はどちらもない
臨床像
・ポイントは「嘔気は伴わない」「日常動作で頭痛は増悪しない」の2点です。もちろん頭痛の性状も重要なのですが、圧倒的にこの2点が重要です。つまり緊張型頭痛を積極的に診断しに行くというよりも「片頭痛を絶対に見逃さない」という姿勢を持つべきと思います。片頭痛は日常生活への支障が大きくかなりQOLに影響出ますし、慢性化するとなかなか治療がやっかいです。また片頭痛の治療薬・予防薬は特異的な治療方法があるので「片頭痛を見逃したくない!!」という姿勢が頭痛診療ではとても重要と思います。
・私の印象ということを強調させていただきますが、私の印象として1次性頭痛の中で「緊張型頭痛」はoverdiagnosisで、「片頭痛」はunderdiagnosisであると感じています。
・おそらくこの背景にあるのは1次性頭痛の中で「緊張型頭痛」が原因として最も多いという点が強調されすぎて教育されてしまっている点と、「肩こり」=「緊張型頭痛」という間違った図式が刷り込まれてしまっているという2点が大きな要因と思います。特に後者に関しては片頭痛の記事内(こちらを参照)でも触れていますが、肩こりは片頭痛の予兆でもよく認めるため「肩こり」≠「緊張型頭痛」です。この点は十分に注意が必要です。肩こりの情報はほとんど頭痛診療において診断には寄与しないと考えてもよいのではないかと個人的には感じます。
危険因子・誘因:確定したものなし
治療
急性期治療
日常生活に支障をきたす場合:アセトアミノフェン・NSAIDs
*常にMOHに注意が必要(特に2~3日以上/週の使用は避ける)
よく筋弛緩薬が使用される場合がありますが、エビデンスは不十分です。個人的にはポリファーマシーの原因となるため出来るだけ処方は避けるようにしています。
予防
■薬物療法
三環系抗うつ薬:アミトリプチン(商品名:トリプタノール®)
*私はめったに使用しません
■非薬物療法
すべての緊張型頭痛患者で考慮するべき
参考文献
・頭痛の診療ガイドライン2021 監修:日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会 編集「頭痛の診療ガイドライン」作成委員会