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三叉神経・自律神経性頭痛 TACs

TACs (trigeminal autonomic cephalalgias:三叉神経・自律神経性頭痛)に関してまとめます。

ICHD-3の分類

3.1「群発頭痛」
3.1.1「反復性群発頭痛」
3.1.2「慢性群発頭痛」

3.2「発作性片側頭痛」
3.2.1「反復性発作性片側頭痛」
3.2.2「慢性発作性片側頭痛」

3.3「短時間持続性片側神経痛様頭痛発作」
3.3.1「結膜充血及び流涙を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作(SUNCT)」
3.3.2「頭部自律神経症状を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛(SUNA)」

3.4「持続性片側頭痛」
3.4.1「持続性片側頭痛, 寛解型」
3.4.2「持続性片側頭痛, 非寛解型」

3.5「三叉神経・自律神経性頭痛の疑い」

臨床像

・三叉神経・自律神経性頭痛では共通した頭痛(眼窩部 or 眼窩上部 or 側頭部)と同側に随伴する自律神経症状を認めます。以下にそれらの5項目をイラストにしてまとめました(「耳閉感」を認める場合もあります)。まずはこのイメージをしっかりとつかみたいです。*耳閉感に関してはMさんにコメントでいただき大変ありがとうございます。
・上記の細かい分類はこの臨床像とあとは発作頻度、程度、持続時間など(その他インドメタシンへの反応性)により分類されると少し理解しやすくなると思います。

群発頭痛

・疫学 20~40歳代 男性:女性=3~7:1
*元々は男性主体とされていたが、近年女性も多いことがいわれており性差はそこまで重要ではないことが指摘ある(過去は7:1→現在は2:1 or 3:1)
*喫煙が高い
*TACs全体の>90%を群発頭痛が占める lifetime prevalence 0.12%
・誘発因子:飲酒(発作時95%飲酒で誘発)、アルコール以外の誘因(ヒスタミンまたはニトログリセリン いずれも血管拡張作用を有する)→誘因摂取の開始2時間以内に誘発
*頭痛の周期内で誘発される(周期外では誘発されない)
夜間、睡眠中に起こりやすい・毎回同じ時刻に発症することも多い
→「視床下部」のcircadian rhythmが関連している機序が推定されている
→片頭痛は就寝中発症はないため鑑別点として対照的である
・頭痛持続時間/頻度:45-90分程度、1-3回/日程度が多い、1回の周期は6-12週間/年が多い
・発症様式は突然発症で15分以内にpeakに達する、終了も比較的突然
不穏になりやすい(報告によるが90%以上とも・片頭痛はじっと寝ていたい点が対照的)
・片側性:毎回同じ側または周期ごとに違う側に移行する(同じ周期内で側は変化しない)
・病型といて反復性 episodicと慢性 chronicがあるが、日本は反復性がほとんど(欧米は慢性が約20%程度ある)
・群発頭痛も片頭痛と同様に予兆期と回復期がある Neurology 2018;91:e822
*前兆としてのphotophobiaは群発頭痛では片側性が多い
・誤診:片頭痛、三叉神経痛、副鼻腔炎、歯科疾患
→下垂体病変や海綿静脈洞病変との鑑別が重要で全例MRI検査を推奨(European Headache Federation consensus)

参考:日本からの群発頭痛の臨床像に関する86例の報告 cephalalgia 2011;31:628-633.
・疫学:年齢 38.4歳(17-73歳)、発症年齢31.0歳(10-70歳), 男女比=3.8:1, 慢性は少なくほとんどが反復性
・疼痛部位:眼窩後部 80%, 側頭部 52%, 後頭部 22.1%, 前頭部 18.6%, 上歯 16.3%, 頭頂部 9.3%, 鼻 4.7%, 下顎 4.7%, 頬3.5%, 首2.3%, 肩2.3%, 耳2.3% *歯の疼痛だと不必要な抜歯をうけることもある
・持続時間:
・時間帯:夜間25.6%, 夜間のみ22.1%, 日中16.3%, 日中のみ10.5%, 同じ4.7%, 毎回ことなる 20.9%
・自律神経症状:流涙 66.3%, 結膜充血 31.4%, 鼻漏 55.8%, 鼻閉 30.2%, 顔面発汗 20.9%, 眼瞼下垂 8.1%
・随伴症状:嘔気 39.5%, 嘔吐 15.1%, 羞明 30.2%, 音過敏 30.2%, 不穏状態 69.8%, 動悸 42.9%, 動作による増悪 31.0% *随伴症状の嘔気や過敏症状から片頭痛と誤診される場合もある

診断基準

A:B~Dを満たす発作が5回以上ある
B:性状(重度~きわめて重度)・部位(一側性・眼窩部、眼窩上部または側頭部のいずれか1つ以上の部位)・持続時間(15~180分間持続)
C:①頭痛と同側に臨床像の症状を1項目以上認める または②落ち着きのない、あるいは興奮した様子
D:発作頻度は0.5~8回/日である
E:他疾患の除外

急性期治療

1. トリプタン製剤:スマトリプタン3mg皮下注射(保険適応あり、自己注射、最大量6mg/日)*最も効果がある

2. 酸素吸入:フェイスマスク7L/分 15分間吸入(在宅酸素療法保険適応あり)

*効果なし:アセトアミノフェン、NSAIDs、リドカイン、コカイン、エルゴタミン

予防治療

ベラパミル 最大量:240mg/日 *海外では360mg/日で治験がある
*今後CGRP受容体抗体のガルカネズマブは海外で承認あり NEJM 2019;381:1320141.

発作性片側頭痛 paroxysmal hemicrania

臨床像:発症30-40歳が多い、慢性型が多い(80%)、2-30分程度持続する片側痛が5回/日以上出現する
誘因:アルコール摂取、頸部運動
治療:インドメタシン絶対的効果がある(インドメタシンtrialをするべき)
*25mg 3回/日 3-7日→効果乏しい場合 50mg 3回/日 3-7日
*24時間以内に効果発現がある
*インドメタシンが他のNSAIDsと違い効果がある理由は解明されていない(可能性: BBBを他剤よりも通過しやすい、CBFを減少することで頭蓋内圧を減少するなど)

診断基準

A:B~Dを満たす発作が20回以上ある
B:性状(重度)・部位(一側性・眼窩部、眼窩上部または側頭部のいずれか1つ以上の部位)・持続時間(2~30分間持続
C:①頭痛と同側に臨床像の症状を1項目以上認める または②落ち着きのない、あるいは興奮した様子
D:発作頻度は5回~/日
E:治療量のインドメタシンに絶対的な効果を示す
F:他疾患の除外

短時間持続性片側神経痛様頭痛発作

診断基準

A:B~Dを満たす発作が20回以上ある
B:性状(中等度~重度)・部位(一側性・眼窩部、眼窩上部、側頭部またはその他の三叉神経支配領域)・持続時間(単発性または多発性の刺痛・鋸歯状パターンとして1~600秒間持続
C:頭痛と同側に臨床像の症状を1項目以上認める
D:発作頻度は1回~/日
E:他疾患の除外

持続性片側頭痛

診断基準

A:B~Dを満たす一側性頭痛がある
B:3か月を超えて存在・性状(中等度~重度)
C:①頭痛と同側に臨床像の症状を1項目以上認める または②落ち着きのない、あるいは興奮した様子、あるいは動作による痛みの増悪
D:治療量のインドメタシンに絶対的な効果を示す
E:他疾患の除外

参考文献
・頭痛の診療ガイドライン2021 監修:日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会 編集「頭痛の診療ガイドライン」作成委員会