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ラコサミド LCM: lacosamide

発売開始後から近年非常に処方する機会が増えた薬剤の代表がlacosamideです。優秀な新規抗てんかん薬をまとめて3L(lacosamide, levetiracetam, lamotrigine)と呼ぶこともあるようです。

薬剤の特徴

商品名:ビムパット

作用機序:Na受容体阻害 適応:部分発作(二次性全般化発作を含む)

半減期:15時間 約3日で定常状態に達する
製剤:錠剤(50mg, 100mg, ドライシロップ)、点滴静注薬(200mg/20mL)

投与量
開始量:100mg/日、維持量:200mg/日、最大投与量:400mg/日
(*重度腎機能障害もしくは軽度~中等度肝機能障害患者では最大投与量300mg/日)
(処方例:開始)ラコサミド(ビムパット)50mg 2錠分2  *高齢者では50mg 1錠分1から開始することもあります
(処方例:維持)ラコサミド(ビムパット)100mg 2錠分2

投与禁忌:重度の肝機能障害
相互作用:なし
副作用:めまい、眼の症状(霧視、複視など)、徐脈性不整脈、消化器症状など(重篤なものは無顆粒球症)

*参考:ラコサミドと不整脈について
1) Yadav R, Schrem E, Yadav V, et al. (December 27, 2021) Lacosamide-Related Arrhythmias: A Systematic Analysis and Review of the Literature. Cureus 13(12): e20736. DOI 10.7759/cureus.20736
・systematic reviewにより17例のラコサミド関連の不整脈を解析
・17例の内訳:VT 29.4%(5/17), 新規発症心房細動 17.6%(3/17), CABV 17.6%(3/17), Mobitz type 1 ABV 11.8%(2/17), 洞停止 11.8%(2/17), PEA 5.9%(1/17), wide QRS 5.9%(1/17)

2) Epilepsy Research 2021; 176.106710
・ラコサミド点滴静注(内服ではなし)により心血管副作用がどの程度生じたかを検討(既報のほとんどが内服での心血管副作用の検討であり急性期静注での副作用を調べていないため)
・投与量 LCM 400mg 点滴静注
心血管副作用:32.9%(=28/85例)
・内訳:新規の1度房室ブロック(22.4% 19例→いずれも自然に改善), 低血圧(8.2% 7例), 心房細動(2例), 徐脈(2例), 心房粗動(1例)
*ここでは2度房室ブロックと完全房室ブロックは報告なし
・収縮期血圧 pre 129.7→ post 129.6 mmHg
・HR/min pre 91.7→ post 86.9 *P=0.01
・PR間隔 pre 169.3→ post 184.5 msec *P<0.01
・QTc間隔 pre 452.7→ post 450 msec
・リスク因子は高齢または心疾患の既往

使いどころ

・ラコサミドを一言で表現すると「部分発作に対して今まで第1選択であったカルバマゼピンの唯一の欠点である副作用や薬剤相互作用を軽減した薬剤」というイメージです(臨床試験では発作抑制に関してカルバマゼピンに対して非劣性)。
・カルバマゼピンはどうしても高齢者ではふらつき、低Na血症などの副作用が問題となり(もちろん薬疹も)、また高齢者は内服する薬剤が増えるため相互作用も非常にネックでした。この点がかなり解消された点は大きく(房室ブロックなどの徐脈性不整脈は引き続き注意!!)、高齢者の部分発作に対する非常に有用で使用しやすい薬剤です(レベチラセタムやラモトリギンと同様)。高齢者のてんかんに関してはこちらもご参照ください(高齢者のてんかん病型はほとんどが部分発作由来です)。
・また点滴製剤もあるため、てんかん重積の急性期の点滴から内服への移行もしやすい点が強みです。
・定常状態に達するのも3日程度なので、比較的急性期に速く増量することも可能です。

管理人記録
2022/11/25 ラコサミド副作用による心房細動を経験し調べた内容を追記