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CAA: cerebral amyloid angiopathy 脳アミロイド血管症

本記事はかつて一緒に働かさせていただいたY先生が作られた資料を多く引用させていただき作成しております。Y先生引用に関してご快諾いただき大変ありがとうございました。

病態

軟髄膜の血管にAβが沈着し血管が破綻することで皮質下出血/皮質~皮質下境界領域の出血(特に後頭葉・側頭葉主体)や円蓋部くも膜下出血を呈することが特徴です(CAAではAβ40が、アルツハイマー型認知症ではAβ42の沈着が主体になるという違いがあるようです)。またこのCAAに血管炎を伴う病態をCAA-ri(CAA-related inflammation)と表現します(血管のAβに対する自己免疫機序ではないか?と推定されています)。
・年齢と罹患率の相関関係が強いことも特徴です(基本的には高齢者の疾患)。

臨床像

・CAAは脳出血が、CAA-riでは亜急性経過の認知機能障害(白質脳症)や痙攣が初発症状となることが多いようです。「亜急性経過の認知症」の鑑別としてCAA/CAA-riは考慮するべきと思います。以下の病態図がとても分かりやすいため掲載します。


・またTFNE(transient focal neurological episodes)という一過性の神経学的巣症状を認める場合があり、症候としてはTIAとほとんど同じものですが、これをTIAとして抗血栓薬を入れると脳出血を助長してしまうリスクがあるという注意があります。
・アルツハイマー型認知症は先ほどの病理からもわかる通りCAAを合併しやすく、逆もまたしかりなのでCAA患者さんでは「認知症の評価」も重要です。
・画像上は「高齢者の非外傷性円蓋部くも膜下出血」「皮質下を主体とした多発microbleeds」などが本疾患を疑う契機として重要なポイントと思います。円蓋部くも膜下出血に関してはこちらにまとめがあるのでご参照ください。
・病変の検出にはMRIのT2*WIやSWIが優れています。
・通常の高血圧性の脳出血では皮質下よりも深部の出血が多いため分布の傾向に違いがあります。


■CAA診断基準 “Modified Boston criteria” 感度94.7% 特異度81.2% Stroke. 2018;49:491-497.

definite:病理診断が必要

probable:以下を満たす場合
1:脳葉、皮質あるいは皮質下の多発性出血や脳表ヘモジデリン沈着
2:年齢55歳以上
3:その他の出血原因を認めない
(外傷、血管奇形、出血性梗塞、腫瘍内出血、血管炎など)

possible:上記1で多発ではなく単一の出血を認め、その他2,3を満たす場合

■CAA-ri診断基準の提唱 J Neurol Neurosurg Psychiatry 82:20-26,2011

definite:以下を全て満たしかつ病理組織学的に以下を認める(脳血管周囲、血管壁内の炎症・アミロイド血管沈着)

probable:以下を全て満たす
1:急性または亜急性の発症
2:年齢40歳以上
3:臨床症状のうち少なくとも1つを呈する:頭痛、意識障害か行動変化、局所神経症候、痙攣
4:MRI T2強調画像(or FLAIR画像)で散在性または融合性の病変
  a. 多くは非対称性
  b.±mass effect
  c.±脳軟膜あるいは脳実質の造影効果
5:SWIでCAA既存を示唆する所見の証明
  a.多発する皮質~皮質下出血/微小出血 and/or b.最近または過去の脳葉出血
6:腫瘍、感染症、他の原因を認めない

CAA-riでは軟髄膜の造影効果や血管性浮腫を反映した白質病変などを認める点が特徴的とされます。髄液所見は炎症所見を認める場合もありますが、炎症が脳に限局しているため髄液所見で細胞数上昇を認めない場合もあるとされています。

治療

■CAAの場合
・CAAに関しては根本的な治療法疾患修飾療法が存在しないのが現状ですが、病態を悪化させない対応“Do no harm”がCAAでは重要になります。

・脳出血に対する頭蓋内手術:出血のコントロールがつかなくなる場合があるため頭蓋内手術は避けるべきとよく言われます(脳神経外科の先生からは禁忌と私は教わりました)。
*脳卒中ガイドライン2021での記載:「脳アミロイド血管症に関連する脳出血に対する血腫吸引術を考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)」

・抗血栓薬を避けるべきかどうか?:長期的には避けることを検討・降圧などで出血リスクをできるだけ下げることを優先する
*脳卒中ガイドライン2021での記載:「脳葉型脳出血の既往があり、脳アミロイド血管症が強く示唆される場合、抗血栓療法を行わない選択を考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)」

■CAA-riの場合
免疫抑制剤の使用を検討 具体的にどの免疫抑制剤を使用するべきか?に関しての突っ込んだrecommendationはないですが副腎皮質ステロイドから使用している症例報告が多い印象です(Neuroimmunol. 2020 Nov 15;348:577377.)。
*脳卒中ガイドライン2021での記載:「主に亜急性白質脳症の病像を呈する脳アミロイド血管症関連血管炎あるいは炎症では、免疫抑制薬投与が妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)」
・免疫抑制剤の使用により臨床所見とある程度パラレルに画像所見も改善すると報告されています(NEUROLOGY 2007;68:1411–1416)。

参考文献
・Journal of Stroke 2015;17(1):17-30 CAAに関して非常によくまとまったreview
・N Engl J Med 2010;363:373-81. MGHのcase record「87歳女性:認知症と痙攣」でCAA-riの症例が取り上げられています。discussionが非常に面白い内容でぜひ一読をおすすめします。