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延髄内側梗塞 medial medulla infarction

延髄の脳血管障害は特にPICA領域の梗塞による延髄外側症候群(Wallenberg症候群:詳しくはこちらをご参照ください)が有名ですが、延髄内側の梗塞もしばしば遭遇します(脳梗塞全体の0.5-1.5%と報告されています)。対側の運動障害(顔面を除く)、対側の深部感覚障害と同側舌下神経障害を3徴としたDejerine症候群(「デジェリン」と読みます)を呈することが有名です。

延髄の解剖・血管支配

血管支配:上1/3は椎骨動脈、下2/3は前脊髄動脈から還流されますがvariationが豊富です。

臨床像:錐体路の障害による対側の運動障害(顔面を除く)、内側毛帯の障害による対側の深部感覚障害(顔面を除く)、舌下神経核障害(もしくは核下繊維障害)による同側の舌下神経麻痺が特徴的です。しかし、延髄外側症候群でもそうでしたが血管支配にはvariationがあるため必ずしもこれらが全て揃うわけではありません

問題は舌下神経麻痺でこれがあれば延髄を病巣として同定しやすいですが(脳神経の最も下位はⅫ:舌下神経)、舌下神経核が障害をまぬがれる場合も約4割程度あることが知られており、そうすると頸髄の片側性障害との鑑別は事実上不可能と思います。

両側延髄内側症候群

・延髄下部の障害では前脊髄動脈の障害により、両側性に延髄梗塞をきたすことも報告されており(延髄内側梗塞の2.2-13.4%と更にまれです)、この場合は四肢麻痺を呈し、脊髄障害(頸髄)との鑑別が必要になる場合や、嚥下障害を伴うとギラン・バレー症候群との鑑別が必要となる場合(BRAIN and NERVE 72 (8):901-905,2020に詳しい症例報告があります)など様々です。四肢麻痺で頸髄と末梢神経、筋疾患(特に周期性四肢麻痺など)が除外されれば「何もないかな?」とつい思ってしまいますが、神経解剖的には延髄下部の可能性が残っているため注意が必要です。

・画像所見では梗塞巣が特徴的なハート型(”heart appearance” sign)になることが指摘されています(Tokai J Exp Clin Med., Vol. 32, No. 3, pp. 99-102, 2007)。

■両側延髄内側梗塞38例の検討 Journal of Stroke and Cerebrovascular Diseases, Vol. 22, No. 6 (August), 2013: pp 775-780

初発症状:四肢麻痺(64.9%)、構音障害(48.6%)、眼振(48.6%)、感覚障害(43.2%)、舌下神経麻痺(40.5%)、呼吸障害(24.3%)、嚥下障害16.2%、顔面神経麻痺(16.2%)、注視麻痺(13.5%)、運動失調(10.8%)、ホルネル症候群(2.7%)
血管病変:VA, BA, ASAいずれも正常(38.5%)、VA動脈硬化(38.5%)、VA閉塞(15.4%)、BA動脈硬化(19.2%)、解離(7.7%)、ASA閉塞(3.8%)、PICA動脈硬化(7.7%)
予後:院内死亡23.8%(不良)