腰椎穿刺 lumbar puncture

腰椎穿刺は日常臨床で頻回に行う手技で、手順をまとめさせていただきます。

禁忌

・頭蓋内圧亢進を示唆する所見
・穿刺部位の感染
血液凝固障害(血小板数 < 5万/μL、PT-INR > 1.5)
抗凝固薬内服は禁忌(抗凝固薬の処置前休薬期間に関してはこちらをご参照ください)
*抗血小板薬に関しては絶対禁忌ではなく、緊急性が高い場合は腰椎穿刺を実施を検討します。
*これらに関しては絶対的な基準はないため、各施設でのプロトコルに則る形が望ましいと思います。
*参考までに”European Society of Anaesthesiology”の提唱を記載します(Eur J Anaesthesiol 2010;27: 999–1015.)。
抗血栓薬の休薬期間:ワーファリンINR<1.4になるまで休薬、アスピリン休薬必要なし、クロピドグレル:7日間休薬、チクロピジン10日間休薬、プラスグレル7-10日間休薬、シロスタゾール42時間休薬、DOACおおまかに48時間(腎機能、薬剤に応じて)、未分画ヘパリン 静注の場合4-6時間・皮下注射の場合8-12時間、LMWH(低分子へパリン)24時間、アルガトロバン4時間

■合併症

背部痛
穿刺後頭痛:起立性頭痛で臥位で頭痛が消失することが特徴です。嘔気、頚部痛、耳鳴り、聴力低下、羞明などを伴う場合もあります。
 リスク因子:若年、女性、BMIが低値、頭痛の既往がある、座位での穿刺、針のデザイン
 対策:穿刺針を細いものを使用する・atraumatic needleを使用する(下図左参照JAMA. 2006;296:2012-2022:もし施設で院内採用があれば)・内筒を戻してから抜去する
 対応:対症療法 鎮痛薬、臥位、カフェインなど
硬膜下・外血腫
脳ヘルニア
穿刺部の感染、髄膜炎

合併症頻度に関しては下図にようにまとめられています(Lancet Neurol 2018; 17: 268–78)。

手順

0:物品の準備

・本穿刺針(スパイナル針) 22G, 70mm or 89mm(体格に合わせて選択する)
・23G針、局所麻酔薬(キシロカイン1%など)
・ガーゼ
・マンノメーター(初圧を測定するガラス棒)
・三方活栓(マンノメーターがきちんと接続できることを確認)
・スピッツ 髄液採取用
・清潔手袋
・穴開きドレープ、通常のドレープ
・穿刺後のドレッシング(メディポアなど)

1:体位の調整+穿刺位置の確認

・事前準備では患者さんの体位の調整が最も重要である。側臥位でベッドに対して垂直になるようにする。特に患者の腹側もしくは背側に傾いてしまう場合があり、これは穿刺前にきちんと調整しておき、必要あれば介助者にその体位を維持してもらう。


・また検者と患者の背中も垂直に位置するようにする。体位を整えている過程で下図の様にずれてしまう場合がよくあるため注意。

・穿刺位置はヤコビー線がL4にくることを確認し、通常L3/4, L4/5, L5/S1のいずれかの椎間から最も刺しやすい部位で行う。必ず体位を整えてから穿刺部位を確認する(体位を変更すると位置関係もかわってしまうため)。事前にマーキングをしておく。

下図がJAMAの綺麗なシェーマのため掲載させていただきます(JAMA. 2006;296:2012-2022)。

2:消毒・麻酔・穿刺

消毒・準備:上記の準備が整ったら穿刺部位を消毒し、ドレープをかけ、予め準備した物品を広げる。またマンノメーターと三方活栓を接続し、本穿刺針がすぐ使える様に手元に準備しておく。
麻酔:23G針で穿刺予定部位を局所麻酔する。この際に23G針の根元まで針をすすめても髄腔に達することはないため、しっかり根元まで進めて麻酔をする。この作業の時点で棘突起や骨にあたってしまう場合は穿刺位置が間違っているためやり直す。このように局所麻酔は試験穿刺の意味合いもある。
穿刺局所麻酔をした同じ部位・同じ角度からそのまま本穿刺針を進める左手の人差し指と中指の指先で棘突起を挟むようし、正中位置を常に意識しながら右手で本穿刺針を進める。この際に本穿刺針が手元にないと、一旦目線がそれてしまうため必ず事前に本穿刺針を手元に準備しておく。


・また本穿刺針のベベルの面が上向きになるようにする。ある程度本穿刺針が進んだら両手の小指を患者さんにつけ、両手の親指で本穿刺針の後端を押すように少しずつ進める。
・硬膜を感じることが難しい場合もあるため、ある程度すすめては内筒を抜き髄液の漏出がないかどうかを確認しながらすすめる。髄腔に達する長さは身長と体重から以下の様な計算式も存在する(身長はcm単位、体重はkg単位 引用:American Journal of Emergency Medicine (2005) 23, 742–746)。

・骨にあたってしまう場合は、一旦皮下直下まで針を戻し(きちんと戻す)、頭側にごく少しだけ角度をつけて再度挿入を試みる(角度をつけすぎるとずれやすい)。棘突起の解剖を考慮すると頭側に振るべきである(下図参照)。


初圧測定:髄液の漏出が確認されたら、事前に準備した三方活栓+マンノメーターを装着して初圧を測定する。
検体採取:その後はマンノメーターを外して髄液を採取する。
抜去:採取後は本穿刺針の内筒を戻してから本穿刺針を内筒と外筒を一緒に抜去して終了する(内筒を戻すことで穿刺後頭痛の頻度が減るとされている)。
・穿刺後の安静に関しては明確なエビデンスはないが、30分~2時間程度(施設による)安静することが多い。

NEJMに手技のビデオがあるのでこちらもご参照ください。

*うまくいなかい場合の方法

1:”paramedian approach”

・今までの方法は正中から穿刺する方法”median approach”でしたが、高齢者などで棘上靭帯、棘間靭帯の石灰化が強いとどこを刺しても針がすすまないような場合に有用な方法が”paramedian approach”です。
・正中の穿刺点から1cm程度脊柱の外側、頭側へ10-20%、内側へ10-20%角度を付けて椎間をめざす方法です(この場合「脊柱起立筋→黄色靭帯→硬膜→髄腔」という流れになります)。
下図はこちらのホームページ(https://sinaiem.org/lateral-lp/)より図を引用させていただきました。

今回の記事はMさんにご教授いただいた内容も反映させていただきました。大変ありがとうございました。

参考文献
・Lancet Neurol 2018; 17: 268–78 腰椎穿刺に関してcomprehensiveにその禁忌、合併症などをまとめており勉強になります。

“腰椎穿刺 lumbar puncture” への2件の返信

  1. 脳神経内科医の一番大事な手技といっても過言ではないですかね。ご指摘いただいた体位の取り方が一番大事なように思います。救急外来で一番焦るのがうまく刺さらない時ですが、私は正中アプローチがうまくいかないときはすぐに傍正中アプローチに切り替えています。私はあまり使用したことはないですが、肥満患者でエコーを使用するという報告もありますよね。合併症に関してはSAPT、DAPT中の髄液検査は穿刺しても出血性合併症が意外と出現しなかったという報告もあり、緊急性が高い時はよくICをして穿刺してしまっています(もちろん休薬するのがベターかとは思いますが)。

    1. コメント頂き大変有り難うございます。
      paramedian approachに関してもご教授いただきたいへんありがとうございます。私自身はまだあまりparamedian approachに習熟出来ていないため、difficult caseではtryしてみたいと思います!!
      また抗血小板薬投与下でのLPに関してもご教授いただき大変ありがとうございました。勉強になります!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。