胸水穿刺 Thoracentesis

胸水穿刺の手順

0:物品の準備

・本穿刺針(診断目的穿刺:21G、治療目的:18G, 20Gなど:施設ごとに様々ハッピーキャスなど)
・三方活栓
・輸液ライン(空の状態の)、延長チューブ、排液容器
・23G針、局所麻酔(キシロカイン1%など)、シリンジ(検体採取用の50mlを複数と、穿刺用の20ml程度のもの、局所麻酔用の10ml)
・ガーゼ、ドレッシング
・清潔手袋
・穴開きドレープ、ドレープ
・SpO2モニター
・エコー

1:体位の調整・穿刺部位の決定

・体位はベッド端座位で、両上肢をテーブルの上に置きます(腕を置く位置は枕やタオルなどで調節します)。あまり前傾姿勢すぎると胸水が背側に溜まりにくいため注意が必要です。私は臥位での穿刺は自分ではしないようにしているため端座位での方法だけをここではまとめます。
・身体所見での打診濁音や呼吸音などで同定する方法もありますが、危険を伴う手技のため全例でエコーを当てて胸水貯留を確認します。一般的には胸水貯留の上縁から1-2肋間下とされていますが、穿刺部位としてはエコーでその肋間だけでなく上下の肋間にも胸水が十分貯留しているスペース(10mm以上ある+吸気時に肺が重ならない場所)を選択します(また肺や肝臓と十分に距離が取れていることを確認)。横方向は脊柱から5-10cm外側を穿刺します。エコーで確認しマーキングをしておきます。
*注意点
・また腹部内蔵臓器の損傷を避けるために第9肋間より下は穿刺しないようにします(一般的な解剖知識として肩甲骨下縁は第7胸椎に位置します)。
・肋間動静脈、肋間神経は肋骨の下縁を走行しているため、同部位を誤って穿刺してしまわないように穿刺は肋骨上縁で行います。

2:消毒・麻酔・本穿刺

・穿刺部位の周囲を消毒し、穴開きドレープをかけます。必ず本穿刺針の内筒、外筒などがスムーズに動くかを確認しておき、シリンジをつけて、すぐに使える手元近くに置いておきます。
局所麻酔:まずは23G針とシリンジで局所麻酔をします。先程述べたようにかならず肋骨の上縁から行います。この際に必ず胸壁に対して垂直かつシリンジで陰圧をかけながら針を進めます。胸腔に達すると胸水が引けてくるため、そこの深さを覚えます。シリンジで陰圧をかけたまま針を引き、胸水が引けなくなった部分が胸膜なので同部位が最も痛みを強く感じるため十分5ml以上麻酔をします。
本穿刺:本穿刺針+シリンジを局所麻酔をした部位と同じところ(肋骨上縁)に垂直に陰圧をかけながら針を進めます(この際に本穿刺針が手元にないと穿刺部位がわからなくなってしまうためきちんと事前に準備しておくことが重要)。
 内筒から胸水が引け胸腔に達したところで針を止め、数mmだけ針全体をすすめます(ここが臓器損傷を起こさない上で最も神経を使うところです)。そして内筒の位置が動かない様に注意しながら(外筒をすすめる際に内筒が無意識に抜けてきてしまう場合が多い)、外筒だけを進めて内筒を抜去します。この際に外筒から空気が入らない様に、外筒をすぐに指で蓋します。


・ドレナージ:外筒に三方活栓を接続し、検体採取用のシリンジ輸液ラインの末端をそれぞれ接続します(輸液ラインは本来点滴に刺さる部分をはさみでカットするなどして廃液します)。シリンジで検体を採取し、その後輸液ラインから胸水の排液を得ます。再膨張性肺水腫を予防するために1回あたり1500mLを超えない様にします(輸液ラインのクレンメで排液のスピードなどを調整できます)。
・抜去:全て終了後に外筒を抜去し(どのタイミングで抜去するかは決まりはないようですが、私は呼気で抜去しています)、ドレッシングで覆います。
・最後に胸部レントゲンで気胸の合併などないかどうか確認し終了です。

■合併症
・気胸
・出血:肋間動脈損傷、腹部内蔵損傷
・再膨張性肺水腫

血液凝固系に関してはPT-INR<1.5, 血小板数>5万μLであれば実施可能と考えられている。抗凝固薬、抗血小板薬使用中の穿刺に関しては明らかな基準は設けられていない。

胸水の分析・解釈

■提出する項目

・基本項目:蛋白(+アルブミン)、LDH、細胞数(+細胞種類)、糖、コレステロール
Hct:肉眼的に血液混入を疑う場合 血液のHctと比較して解釈する
*<1%:有意ではなし、1-20%:腫瘍、肺塞栓症、外傷など、50%<:血胸
グラム染色、培養:嫌気性菌が疑われる場合は血液培養ボトルに胸水を入れて提出する
細胞診(50mL):悪性腫瘍疑いでは提出
pH:膿胸など疑う場合、血液ガスのキットで測定が可能 pH<7.2で膿胸や関節リウマチ随伴胸膜炎などを考慮
ADA・抗酸菌PCR・抗酸菌塗抹・培養:結核性胸膜炎疑いで検討
AMY:膵炎、食道穿孔などが疑われる場合検討
胸水ヒアルロン酸:悪性中皮腫の参考書見に検討

*好酸球上昇:空気や血液混入で認める場合が多い

■Light’s criteria N Engl J Med. 2002 Jun 20;346(25):1971-7

Lightの基準
・胸水蛋白 / 血清蛋白 > 0.5
・胸水LDH / 血清LDH > 0.6
・胸水LDH > 血清LDH正常上限の2/3
*上記1つでも該当する場合:滲出性(感度98%・特異度83%)→補助診断へ進む(下参照)
*いずれも満たさない場合:漏出性(確定)

補助診断
・血清蛋白 – 胸水蛋白 ≧ 3.1 g/dL
・胸水蛋白 > 3g/dL
・血清Alb – 胸水Alb < 1.2 mg/dL
・胸水コレステロール > 55 mg/dL
・胸水コレステロール / 血清コレステロール > 0.3
*補助診断のいずれかを満たす場合:滲出性
*補助診断のいずれも満たさな場合:漏出性

各項目の感度、特異度は以下の通りです(JAMA. 2014;311(23):2422-2431. doi:10.1001/jama.2014.5552より引用)。

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