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マスク換気

気管挿管より何より「マスク換気が最も重要」と私は初期研修で教わりました。私は急変の際に、自分は気管挿管しないかもしれないけれど(もっと上手い人にしてもらった方が良い)、マスク換気は自分の責任できちんと行おうという気持ちで臨んでいます。

1:バッグマスクの選択

・バッグマスクは患者にフィットさせるマスクと換気をするためのバッグから構成された医療器具です。バッグ部分の違いから大きく「ジャクソンリース」と「バッグバルブマスク」の2種類があります(下図参照)。
ジャクソンリースは酸素供給によりバッグが膨らみ、バッグを揉む力加減によって一回換気量を調節することが出来ます。院内急変などで近くで酸素供給が可能な場合はまずこちらを使用します。緑色のバッグ部分が成人用は3Lなので1/6揉むと500mL程度の換気量となります。
バッグバルブマスクは酸素供給がなくとも、もんだ後に自然と戻るため換気をすることが可能です。このため1換気量は調節することは難しいですが、酸素供給を必要としないため、院外急変や近くに酸素供給がない院内での急変対応などで有用です。また酸素供給があればリザーバーがついているので高濃度酸素を供給することも可能です。

2:換気方法

EC法
・1人で換気をする場合に行う換気法です。
・第1、2指で”C”の形をつくりマスクフィットさせ、残りの第3,4、5指で”E”の形をつくり下顎を持ち上げます。
手と反対側のマスクからリークしやすいため、意識的に第1、2指の先に力をしっかりいれて反対側を押さえつけるようにします。

2人法
・1人で換気が難しい場合は躊躇せずに2人法へ切り替えます。
EC法を両手で行う方法と、両手の母指球で押し付ける様にしてマスクフィットし、第3-5指で下顎を持ち上げる「母指球圧迫法」があります(下図参照)。後者の法が確実に換気しやすいことが多いと思います。

■マスク換気困難の指標 ”MOANS”

・マスク換気が困難になる指標としては以下の頭文字をとった”MOANS”が有名です。

Mask seal:マスクがフィット
Obesity/obstruction:肥満、気道閉塞
Age>55:年齢
No teeth:歯 歯がないと頬がこけてしまい、換気が難しくなる→入れ歯をいれるもしくはガーゼを頬に入れる
Stiffness/Snoring:気道抵抗上昇、いびき→食道に空気を送り込んでしまうリスクがある

3:エアウェイ

・特に意識障害の患者では舌根沈下によって換気が困難となる場合があります。その際に有用なのがエアウェイ確保のデバイスで経口エアウェイ経鼻エアウェイの2種類があります。経口エアウェイは嘔吐反射誘発のリスクもあるため一般的には経鼻エアウェイを使用する場合が多いと思います(私は経鼻エアウェイしか使用したことがなく、経口エアウェイは使用したことはありません)。
・エアウェイの挿入により舌を咽頭後壁から離すことで換気がしやすくなります。このエアウェイデバイスは積極的に使用するべきです。

■経鼻エアウェイ

・経鼻エアウェイの長さは耳と鼻の距離に合わせたものを使用する。
・安全ピンが付属しているが、これは挿入する前にエアウェイの出口部分に装着しておく(エアウェイを挿入後に安全ピンを通すのは危険なため)。安全ピンはエアウェイが鼻の中に入ってしまわないようにブロックする役割がある。
・経鼻エアウェイにはベベルがあり、潤滑ゼリーをつけた後ベベル面が鼻中隔面となるようにして下鼻道に沿うように挿入し、途中で回旋させて咽頭の方向へ向くようにする。

この記事の内容は後輩の救急救命科S先生にもご教授いただきました。大変ありがとうございました。

参考文献
・「気道管理術 ABCははずさない」 秀潤社 監修:志賀隆先生、林寛之先生