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VEP: visual evoked potential 視覚誘発電位

視神経の脱髄病変は画像では検出が難しい場合が多いです。VEPは例え視力低下が明らかではない場合も、subclinicalな視神経の障害を検出することができ、視神経疾患の評価・診断にとても重要な電気生理検査です。視神経疾患の中でも特に多発性硬化症、視神経脊髄炎などで利用する場合が多いと思います(視神経疾患に関してはこちらもご参照ください)。

1:測定方法

刺激方法
1:pattern-reversal(最も一般的で格子状の模様が切り替わる)
2:flash(固視が困難な場合に使用する)

記録部位
1:MF(Fz):鼻根部から12cm後方に付ける(基準電極)
2:LO(LO)・MO(OZ)・RO(RO):後頭隆起から5cmずつの部位に付ける(下図青色丸)
アース:頬に付ける(どこでも問題ない:下図緑色)
(bipolarでLO-MF, MO-MF, RO-MFの電位差を測定している)

方法:患者さんには中心部分をじっとみてもらう(全視野刺激:full-field stimulation or 半視野刺激:hemi-field stimulation)、必ず片眼ずつ行う(反対側の眼はガーゼで覆うなどして視覚情報が入らないようにする)
*注意点
部屋は暗くする(余計な視覚情報が入らないようにするため)
・集中力が低下している場合は潜時、振幅いずれも悪いため注意が必要(指示が入らない状態では基本pattern reversalでは評価が出来ない点に注意)
・眼鏡、コンタクトレンズは必ずつけてもらう
・後頭部分が力んでいると筋電図のアーチファクトが乗りやすい(口を半開きにしてもらうと解決する場合もある)
電極の抵抗:20Ω以下にする
記録回数:200回加算平均 最低2,3回行い再現性を確認する
divisionの設定:10μV/30ms *reject levelは3divに設定することが多い

2:波形と解釈

■P100潜時
・通常MOを中心として陰性-陽性-陰性の三相性波形を認め、それぞれ極性・潜時からN75, P100, N145と名付けられています。この中で臨床上最も重要なのはP100の潜時であり、視神経での伝導遅延を反映します。基本はMO-MFで観察する。
・P100潜時:通常100-110ms程度 +2.5SD=130.5ms

■形状
・”W-shape”:中心視野の障害といわれる(正確にどこまで病的意義があるかどうかは分からない)

■左右差(左眼刺激と右眼刺激の差)に関して
・潜時左右差10ms以上は有意とする
*振幅の解釈は難しいです

実際の波形例:右視神経炎の症例(自験例)