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Emery-Dreifuss型筋ジストロフィー

病態

Emery-Dreifuss muscular dystrophy(EDMD)は以下の3徴を特徴とした遺伝性の筋ジストロフィーです。通常は小児期に発症します。1960年代にEmery先生とDreifuss先生が見い出したことからこの名前が付いています。私は過去に循環器内科の先生から、「不整脈で当科(循環器科)受診となりましたが、過去にアキレス腱拘縮による手術歴がありEmery-Dreifuss型筋ジストロフィーでしょうか?」という「何でそんなことまでご存知なのか?」という衝撃的なコンサルテーションを受けたことがあります・・・・。

1:筋ジストロフィー
2:関節拘縮
3:心臓伝導障害、心筋障害

原因遺伝子は核膜関連タンパク質をコードしているものが多いです。下図に核膜関連タンパク質の分布を掲載します(Muscle & Nerve. 2020;61:436 – 448.)。

遺伝子と対応するサブタイプは以下の通りです。

臨床症状

■関節拘縮

関節拘縮は頸部伸展、肘屈曲、アキレス腱短縮などを認めます。アキレス腱に関しては外科的アキレス腱の延長術を行う場合もあります。早期の関節拘縮は本疾患の特徴として重要ですが、特異的なものではなく、その他のUllrich型、Bethlem型などでも認めます。(下図はMOLECULAR MEDICINE REPORTS 12: 5065-5071, 2015より引用 アキレス腱短縮によるつま先立ちが目立ちます)

■筋力低下

“humeroperoneal” patternを呈し、上肢近位(上腕二頭筋、上腕三頭筋 *三角筋や棘下筋は障害をまぬがれる)、下肢遠位筋(腓骨筋が主体で、大腿や足内筋は障害をまぬがれる)が障害されます。これにより歩行障害や走ることが難しいといった症状から発症していきます。筋萎縮は緩徐な進行であり、筋力低下のせいですぐに歩行困難となることはあまりありません(他の筋ジストロフィーと比較すると)。

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■心筋障害

EDMDにおいて予後を最も規定する重篤な臓器障害で、全例きちんと不整脈、心筋症の評価を行うべきです。PQ間隔の延長、上室性の不整脈から心室性不整脈まで様々な不整脈を呈し、ペースメーカーや除細動器の適応となります。心筋障害による心不全も合併し、ACE阻害薬などの導入を行います。心房細動合併では通常通り抗凝固薬が適応となります。

引用:Int Heart J 2019; 60: 12-18

治療

根本的な治療法は確立していません。

先程の関節拘縮に対してのストレッチや外科的介入、心筋伝導障害に対する除細動器などの対応が必要となります。