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NMOSD 治療

急性期治療

急性増悪の際の治療としてはステロイドパルス療法と血液浄化療法が挙げられます。

1:ステロイドパルス methyl presonidolone 500-1000mg/day 3-5日間

その後ステロイド後療法を1mg/kg/日で継続する場合が多いです。

2:血液浄化療法 TPE or IAPP1500-2000ml 5-7回

IgG200mg/dl前後を目安に終了もしくは中断を検討すると教科書には記載があります。

血漿交換療法を早期から併用するか?に関しての前向き研究は存在しませんが、Mult Scler. 2016 February ; 22(2): 185–192.既報の後ろ向き研究ではfollow up時のEDSSがbaseline以下になった患者が、ステロイドパルス+血漿交換療法併用群65%の方がステロイドパルス単独群35%(odds ratio=3.36, 95% CI 1.0657 to 10.6004, p = 0.0386)と有意に多いことが報告されています。以下は各群のEDSSの推移を掲載しています。

また871回の急性増悪と1153回の治療法に関して後ろ向きにまとめた大規模な研究結果では、血漿交換療法の方がステロイド治療と比べてCR(complete remission)が有意に多く、特に脊髄炎単独例でその効果を認めることがわかりました。また1st treatment courseから2nd treatment courseへ治療をescalationしたほうが予後が良いことも指摘されています。この研究でCRを得る要因としは1st line therapyとして血漿交換療法を実施することが挙げられています(OR=4.38, p=0.006)。

まとめ:血漿交換療法を早期からステロイドパルスと併用するべきかどうか?に関しては前向き研究が不在で結論は出ていないですが、横断性脊髄炎や症状が重篤な症例、ステロイドパルス療法単独への反応性が悪い場合は血漿交換療法を積極的に早期から併用するべきと思います。

IVIGに関してはその有用性は確立していません(前向き研究は存在しません)。

維持治療

NMOSDでは再発抑制が維持療法の目的です。

■ステロイド

教科書を見ると、以下の様に記載されています。

・維持量:0.3mg/日(15mg/日)程度で少なくとも半年間維持する *10mg/日以下は再発しやすい傾向がある
・再発なければ Δ1mg/月 or Δ10%/月くらいの割合で漸減する
・最終維持:0.1mg/日(5mg/日)

■その他の免疫抑制剤

アザチオプリン、MMF、リツキシマブなどが使用されていますが、いずれも前向き研究はなく後ろ向き研究やExpert opinionによるものです。

リツキシマブに関してはmeta-analysisで有用性が指摘されています(JAMA Neurol. 2016;73(11):1342-1348)。この検討ではARR(anual relapse rate:年間再発率)は 0.79 (0.15) (95% CI, −1.08 to −0.49) 、EDSSは0.64 (0.27) (95% CI, −1.18 to −0.10)低下したと指摘されています。

■モノクローナル抗体

近年モノクローナル抗体のNMOSDへの適応が拡大しておりますます治療方法の幅が広がってきています。2019年はepoc-makingな年で、3つのNMOSDに関するモノクローナル抗体のRCTが発表され、どれも有意に再発抑制効果を認めました。以下にその3つの研究概要をまとめたものを掲載します(Curr Opin Neurol 2020, 33:300–308より引用させていただきました)。

治療のターゲットは以下の通りです。

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*IFN-β、フィンゴリモドはNMOSD増悪のリスクがあるため注意が必要です。