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頭蓋内造影病変の鑑別

ここでは頭蓋内造影病変、特にガドリニウム造影MRI検査による頭蓋内造影病変に関してまとめます(すべての内容をRadioGraphics 2007; 27:525–551より参照・引用させていただきました)。

病態

造影効果は1:血管内造影効果(intravascular enhancement)と2:血管外/間質造影効果(extravascular/intestitial enhancement)の2つから構成されます。

1:血管内造影効果は血管新生や血管拡張、過灌流、血液通過時間の短縮・シャントなどを反映しています。

2:血管外/間質造影効果に関してです。通常脳、脊髄、脳神経と脊髄神経の近位部には脳血液関門(BBB: blood brain barrier)が存在し、BBBにより血管内の造影剤が間質に漏出しないようになっています。つまりBBBの透過性が亢進(BBBが破綻)すると、間質の造影効果を持つということです。BBB透過性亢進(BBB破綻)の原因としては、血管新生、炎症(感染性・非感染性)、虚血、過灌流などが挙げられます。

このことからわかる通り脳以外の臓器は基本的にBBBを有していないため造影効果を持ちます。具体的には転移性脳腫瘍(脳以外の組織由来)、肉芽腫脳実質外病変(硬膜病変や髄膜腫など)などが挙げられます。

皮質灰白質造影効果

原因
血管性:脳梗塞後再灌流、亜急性期脳梗塞、PRES、痙攣
炎症性:脳炎・髄膜炎
(腫瘍由来のことはまれ)

ヘルペス脳炎では皮質灰白質病変を来し、BBBが破綻することで皮質灰白質の造影効果を持つことが知られています(上図右)。

脳梗塞後の造影効果は通常4週から4か月で招待し、脳実質容量の減少にとってかわります。

皮質・皮質下結節性造影効果

原因:転移性脳腫瘍塞栓

転移性脳腫瘍は通常血行性(動脈性)に起こり、灰白質-白質境界部周囲に好発します。通常動脈性に、テント上、中大脳動脈領域に好発する傾向があります。灰白質部は細胞体が多く血管が豊富なのに対して通常白質は血管に乏しい傾向があります。このため、灰白質から白質の移行部で分岐するところでトラップされるため同部位に転移が多いとされています。灰白質に生じることもあるため小さい病変でも痙攣を含めた神経症状をきたしやすいとされており、0.5-2.5cm程度であることが多いです。

転移性脳腫瘍に対して原発性脳腫瘍はより深部に起こりやすい傾向があります。また神経症状をきたす病変の大きさも2.5-5.0cmと比較的大きい傾向があります。

画像上境界明瞭で、血管新生を伴うことで5mmより大きくなることもあり、BBB破綻をきたすと周囲の血管性浮腫を伴います。

まれに静脈由来の場合があり、それは前椎体のBatson静脈叢由来であり、骨盤内腫瘍から後頭蓋窩(小脳・脳幹)に好発する傾向があります。

深部病変:脳室周囲造影効果

原因:PCNSL、primary glial tumor、感染性脳室炎

また細菌性髄膜炎など感染症に随伴する脳室炎でも同様の所見を認めます。通常は薄い(<2mm)造影効果を脳室にそって連続的に認めます。

深部リング状造影効果

リング状造影効果(ring enhancement)の鑑別のゴロとしては”MAGIC DR”が有名です。またコメントいただき、”MAGICAL DR V”というゴロも教えていただきました。ここでは”MAGIC DR”に加えて、A:AIDS(toxoplasma), L:lymphoma, V:vasculitisが入ります(ご教授いただき大変ありがとうございました)。以下では疾患ごとの造影効果のパターンを解説します。

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■脳膿瘍

膿瘍周囲の肉芽組織は血流増加と新生血管、BBBが破綻した毛細血管を持つため、リング状造影効果をしまします。リング状造影効果を持つ壁は通常薄く壁の内側も外側も滑らか(ギザギザしていない)な形態的特徴があります。酸素が豊富な灰白質よりの方が壁が分厚くなる傾向があります(白質や脳室側と比べて)。壁が薄い側は新規にそこから膿瘍を形成したり、脳室に接している場合は脳室内へ穿破するリスクがあります。

■腫瘍

造影される壁は新生血管を高い密度で含んでおり(リング状造影効果)、壁が不整壁の内側がギザギザしており、壁が10mm以上厚い(全体でなくてどこか一部)という特徴があります。新生血管は通常の血管組織から発育してくるため、血管組織が豊富な皮質側(外側)の造影される壁が厚くなる場合があります。

■脱髄

多発性硬化症が代表例です。多発性硬化症では細静脈周囲の炎症が主病態とされており、血管新生や壊死などはありません。このため炎症によるBBB透過性亢進による造影効果をきたし、造影効果としては淡く、リング状造影効果を持つ場合も壁は薄くリングが完全に閉じず不完全(incomplete)になる場合(open ring enhancement)があります。また血管性浮腫はきたさないため周囲の浮腫は通常認めません。これらが脳膿瘍や腫瘍とは鑑別点になります。

参考文献

・RadioGraphics 2007; 27:525–551 造影病変に関する詳細なreviewでとても勉強になります。