注目キーワード

起立性低血圧への治療介入

1:起立性低血圧に対する治療

1.1:非薬物治療

起立性低血圧に対する治療は基本対症療法です。薬剤は病態自体を改善するわけではないため、副作用も懸念があり、まずは非薬物療法の導入が重要です。どこまで患者さんに下記の内容を教育出来るかが日常診療の鍵です。以下に非薬物療法に関してまとめます。

飲水300~500ml程度(意外と多いですね)
時期:朝起床時、食事前
飲水後:10-15分後に血圧上昇、40分後ピーク、1時間以上持続する
*MSA, PAF患者においてSBP35mmHg以上上昇する(薬剤よりも効果ある)(AVP放出が原因?)

・夜間頭を少し高くして寝る(臥位高血圧の予防になる)
ゆっくり起き上がる
・日中横になる時間を短くする
・isometric exercise

姿勢(応急処置)足組、つま先立ち、しゃがむ など (下図参照)

弾性ストッキング着用
食事少量頻回にする・炭水化物を少なくする(とる場合は夜にとるようにする)・飲酒は血管拡張をきたすので注意
暑い環境を避ける

1.2:薬剤治療

薬剤治療の原則
非薬剤治療での介入で効果に乏しい場合に薬剤を考慮する。
病態のbaroreflex functionを改善するわけではなく、純粋に血圧を上昇させるだけである(病態を良くしている訳ではなく、あくまで対症療法)。
supine hypertension(臥位高血圧)がどうしても懸念されるため、まずはshort acting drugs(短時間作用型薬剤)から使用する(血圧180/110mmHg以上になる場合は薬剤変更が必要)。
・evidence-basedなものには乏しい状況、患者ごとに試してみるしかない。

1:short acting drugs

ドロキシドパ (Droxidopa) L-DOPS 商品名:ドプス®
作用機序:体内で代謝されノルアドレナリンとなる→中枢、末梢にて作用する
製剤:100mg/1T or 200mg/1T or 細粒
(処方例)
開始:100mg 3T3x
維持:個人差大きく様々
最大:900mg/日 

ミドドリン塩酸塩 (midodrine) 商品名:メトリジン®
作用機序:プロドラッグ→体内で活性代謝物になりα1受容体刺激(α2,β受容体には作用しない)BBB通過性なし・β作用がないため心機能への影響なし
T max=1.5hr, T 1/2=1.3~2.4hr
効果発現時間:30分~1時間、持続時間:2-4時間
製剤:2mg/1T
(処方例)
維持:2mg 2T2x
最大:8mg/日
副作用:比較的少ない(小児にも適応あり)臥位での血圧上昇、頭痛、動悸

2:long acting drugs

フルドロコルチゾン (Fludrocortisone) 商品名:フロリネフ®
作用機序:鉱質コルチコイド(糖質コルチコイド作用はなし)
製剤:0.1mg/1T
(処方例)
開始:0.05mg/日
維持:0.1-0.2mg/日 *心不全症状増悪に注意が必要

3:その他

α-GI:食事での炭水化物負荷を軽減するため

2:消化管症状に対する治療

2.1:胃不全麻痺(Gastroparesis)に対する治療

2.2:便秘 こちらをご参照ください。

3:排尿障害に対する治療

排尿障害に関してはこちらをご参照ください。

参考文献
・ Lancet Neurol 2008;7:451