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白質病変へのアプローチ

白質病変は日常臨床で頭部MRI検査でしょっちゅう認める所見ですが、どれが病的な所見で、どれが非特異的な所見なのか?悩むことも多いです。私の尊敬する放射線科のO先生から非常に分かりやすい論文(Radiología.2012;54(4):321-335 “Hyperintense punctiform images in the white matter: A diagnostic approach” 元はスペイン語ですが、English editionがありますのでこちらをご覧ください)を教えていただき、ここでその内容をまとめさせていただきます。

病態

ここでは白質病変を以下の3パターンに病態を分類し、それぞれの病態がどの画像と一致するかを今後解説していきます。

Vascular pattern(VP):動脈病変によって起こる分布です。慢性虚血性変化が代表的な鑑別です。
Perivascular pattern(PvP):血管周囲の炎症を反映した分布を表し、多発性硬化症が代表的な鑑別疾患です。
Non-specific pattern(NsP):上記いずれにも該当しない分布です。

部位

白質病変は大きく4つ(subcortical, deep area, periventricular, corpus callosum)に分類されます。

Subcorticalの領域はJuxtacortical(皮質と直接接し、U-fiberを含む領域)Sub-U subcortical(U-fiberは含まず皮質と少し距離がある領域)に分類され、前者はPerivascular patternの病態と後者はVascular patternの病態と対応しています。特にこの区別はMSの鑑別においてとても重要なのでMRIで病変が皮質と接しているか?U-fiberを含んでいるかどうか?に注目する必要があります。

Deep areaは分水嶺領域のbordering deep subcorticalとそうではないnon-bordering deep subcorticalに分けられ、前者がvascular pattern、後者がnon-specific patternと対応します。

Periventricularは脳室に接する病変を表し、一般的には脳室から1cm以内の病変を表します。これは病態としてはPerivascular pattern, vascular patternいずれもあり得ます。

Corpus callosumは脳梁病変ですが、これは様々な病態で障害され別記にまとめます。

まとめると下図のようになります。

形態

卵円形(ovoid)、紡錘状(fusiform)の形態は脳の微小循環に沿った分布し、病態はPerivascular patternと対応し、多発性硬化症などで一般的な分布となります(脳室と垂直に分布すると”Dawson’s finger”と表現されます)。点状・円型の形態は非特異的で、ある特定の疾患を示唆するものではありません。また、病変の大きさと病態の関係に関しては、1つの病変(癒合していない)で大きさが10-15mm以上のものはPerivascular patternの病態と対応します。ただ小さい病変はその大きさだけで特定の病態と対応するものはありません。

造影効果

不完全なring-enhancementはperivascular patternの病態と対応するとされています。ただその他の造影効果のパターンだけで特定の病態と対応関係にある訳ではありません。

病態と病変の対応関係

以下に病態とそれに対応する病変分布のまとめを掲載します。

Vascular patternは典型的な慢性虚血性変化(最も多い)や、高ホモシステイン血症、血栓傾向、片頭痛、アミロイドアンギオパチー、血管炎、CADASILなどを含みます。

Perivascular patternは代表的な鑑別として多発性硬化症、その他ADEM、Sjogren症候群、SLE、サルコイドーシス、ベーチェット病、感染(ライム病、クリプトコッカス)などが該当します。

白質病変はなかなかとっかかりが難しいですが、この分類は非常に分かりやすいと思います。参考になりましたら幸いです。放射線科O先生ご指導大変ありがとうございました。