抗てんかん薬(AED: anti-epileptic drugs)と皮疹(薬疹)はきってもきれない関係にありますのでここでまとめます。
1:各薬剤の頻度
平均すると1つの抗てんかん薬の使用で2.8%に皮疹があるとされていますあり(2.1%は皮疹により中断)。以下はNeurology 2007;68:1701より引用よりさせていただきました。
■皮疹が多い薬剤
・フェニトイン(PHT) 5.9% (過去の報告:5~7%)
・ラモトリギン(LTG) 4.8% (過去の報告:5~10%)
・カルバマゼピン(CBZ) 3.7% (過去の報告:5~17%)
■皮疹が少ない薬剤
・レベチラセタム(LEV) 0.6%
・ガバペンチン(GBP) 0.3%
・バルプロ酸(VPA) 0.7%
グラフにすると下の通り。
以下は実際に皮疹によって抗てんかん薬の中止に至った頻度を表しています。ほとんど上のグラフと同じですね。
2:抗てんかん薬による皮疹のリスクは?
過去に抗てんかん薬で皮疹があること(他剤で皮疹がある場合:8.8% vs 他剤で皮疹がない場合:1.7%, OR=3.1)のみがリスク因子として抽出されました。過去の報告では女性の方が男性よりも皮疹が起こりやすいという報告もあるようですが、この研究では指摘できませんでした。
各薬剤ごとの皮疹リスク(過去にAEDで皮疹ある場合、ない場合)は以下の通りです。
3:重症薬疹(アジア人の場合)
以下はアジア人(ここでは台湾人)での抗てんかん薬による重症薬疹をまとめます(引用Neurology 2011;77:2025 154例のAED関連の重症薬疹の解析)。アジア人はカルバマゼピンにおいて重症薬疹が西洋人と比較して起こりやすいことが指摘されており、アジア人におけるデータが必要と判断して解析されたものです。
内訳
・カルバマゼピン(CBZ):58.4%
・フェニトイン(PHT):24.0%
・ラモトリギン(LTG):11.7%
・フェノバルビタール(PB):2.6%
*バルプロ酸、トピラマートでは重症薬疹なし
他の抗てんかん薬で皮疹があった患者のうちカルバマゼピン、フェニトイン、オクスカルバゼピンは27~35%で皮疹を生じますが、非芳香族の抗てんかん薬(バルプロ酸、トピラマート)であれば基本的に問題ない結果でした。
4:実臨床でどのようにこの知識を活かすか?
■抗てんかん薬での皮疹リスク
・多い薬剤:カルバマゼピン、フェニトイン、ラモトリギン
・少ない薬剤:バルプロ酸、レベチラセタム、トピラマート、ガバペンチン
■抗てんかん薬で皮疹が出てしまった場合
皮疹リスクが低いバルプロ酸、トピラマート、ガバペンチン、レベチラセタムなどへの変更を検討します。カルバマゼピン、フェニトイン、ラモトリギンなどへの変更は皮疹が再度出現するリスクが高いため避けるようにします。
以上抗てんかん薬と皮疹のデータをまとめました。昔からある薬剤の中ではやはりバルプロ酸の安全性が光ります。