1:脳病変
脳3T>1.5T:T2WI axial, 3D-FLAIR( or 2D-FLAIR sag +axial), 造影T1WI
■ovoid lesion
白質に楕円形の病変を認める。側脳室壁に対して垂直で、特に脳室に接していることが重要です。虚血でも認める所見のため、特異度は低い欠点があります。
*McDonald基準2017年の空間的多発性の1つ(脳室周囲病変)
■脳梁病変 Septal-callosal interface lesion *FLAIR sagittal像が有用
脳室に対して垂直に脳梁内に認める病変。脳梁部は虚血に強いため、一般的に脳血管障害や血管炎では障害されにくい部位ですが、多発性硬化症では55~95%で病変を認めるとされ、鑑別に有用な解剖部位です。脳梁部の萎縮は認知機能障害や病勢との関係の可能性を指摘されています。
脳梁病変の鑑別を下にまとめました。
■傍皮質病変 juxtacortical lesion
傍皮質病変は、皮質下U-fiberを障害し、同部位に沿って伸展する場合もあります。この皮質下U-fiberは通常虚血病変では障害されず(U-fiberは髄質と皮質の両方から血流を受けているため)、多発性硬化症では静脈周囲の炎症を反映しているとされます(白質病変の鑑別に関してはこちらをご参照ください)。
*McDonald基準2017年の空間的多発性の1つ(皮質もしくは皮質近傍病変)
傍皮質病変の存在は大脳皮質の菲薄化や深部灰白質の萎縮と相関関係にあることが指摘されています(傍皮質病変の部位と菲薄化の部位の対応はしていない)。 AJNR 2015;36:2270
■皮質病変
DIR(double inversion recovery)法で撮像すると描出が可能です(FLAIRよりも高感度)。NMOSDや片頭痛では通常皮質病変を認めないため鑑別点になります。McDonald基準2017年に皮質病変も空間的多発性に組み込まれており重要です。
■T1強調像
慢性期低信号:T1 black hole 軸索消失・機能障害の程度と相関あり
急性期低信号:炎症による浮腫を反映しており、この時点では可逆性(急性期と慢性期では意味が違うことに注意が必要です)
虚血による壊死組織部分もT1 lowになりますが、多発性硬化症の場合は必ずCSFよりは高信号を示すことが特徴です(虚血による壊死組織はCSFとほぼ同じ低信号)。
*ADEMでは通常T1 blackholeを認めないため鑑別点となります。
■造影効果
脱髄の活動度が高い部分が造影効果を示します。造影効果のパターンは全体が造影される場合、ring状、open-ring状など様々です。通常造影効果は1か月程度持続します(6か月以内に90%は消失する)。
*McDonald基準2017年の「時間的多発性」では「造影病変と非造影病変が同時に存在する」が該当します(つまり1回のMRI検査で診断が可能な場合がある)。
“open-ring sign”:灰白質部分に造影効果がなく、リング状の造影効果の輪が閉じ切っていない(開いている)所見で脱髄に特異的とされている。
2:視神経病変
一般的に片側・視神経の後方(視神経管~頭蓋内)に病変を認める場合が多いです。眼窩内は視神経周囲に脂肪があるため、STIR coronalで撮影すると分かりやすく、また造影T1強調像も必要です。視神経自体に高信号を認め、視神経自体には信号変化を認めず視神経周囲に信号変化を認める視神経周囲炎(こちらも参照)とは区別されます。視神経炎にかんしてのまとめはこちらをご参照ください。
*McDonald基準2017年の空間的多発性に視神経病変は組み込まれていない。このため視神経炎発症のMS疑い患者では視神経以外の中枢神経に2箇所の病変を認めないと空間的多発性は証明できない。
3:脊髄病変
脊髄 1.5T(3Tである必要なし): T2WI, PDWI, STIR, 造影T1WI
矢状断で2椎体以下の長さ、横断像では部分的(側索~後索に多く・脊髄横断面の1/2以下)、境界明瞭な造影効果を認める(脊髄表面に沿った造影効果はない)ことが特徴的です。
**McDonald基準2017年の空間的多発性の1つ(脊髄病変)
・経過:急性経過
・長軸:short lesionが一般的、頚髄>胸髄に多い
・短軸:側索、後索に多く、短軸面積の半分以下が多い、左右非対称、白質と灰白質の境界は関係なく病変は分布し、脊髄腫大はほとんどなく、T1低信号を認めることはまれ
造影効果(左:非造影、右造影後)
脊髄病変の鑑別に関してはくわしくこちらにまとめましたので、ご参照ください。
4:NMOSDとの鑑別
脳病変、視神経病変、脊髄病変の分布をNMOSD, 抗MOG抗体関連疾患と比較し、まとめると下図の様になります。
■日本でのMSとNMOSDの画像比較 AJNR Am J Neuroradiol 39:1239–47 Jul 2018
NMOSD89例(AQP4抗体陽性93.3%)、MS89例(RRMS88.8%, PPMS6.8%, SPMS2.2%)の画像所見を検討。
・脳病変に関して:脳室周囲病変はMSで多い
脊髄病変に関して
・MS頸髄に多く、NMOSD胸髄に多い
・NMOSDの病変は胸髄病変は長く、頸髄病変は短い
・MSはいずれの部位でも病変は短い
5:McDonald基準2017年での「空間的多発性: DIS」
(=中枢神経の4領域のうち2領域以上でT2高信号領域を認める)
1:脳室周囲
2:皮質あるいは皮質近傍
3:テント下
4:脊髄
*視神経病変は症候性病変としてカウントしない(前述の通り)
*2010年との変更点は以下
・症候性と無症候性の区別をしない
・大脳皮質及び皮質直下病変を病変数のカウントに用いる
参考文献
・Clinical and Experimental Neuroimmunology 10 (Suppl. 1), (2019) 32–48:画像の多くはここから引用させていただきました。
・Lancet Neurol 17: 162-173, 2018:McDonald基準
管理人記録:2021/5/30追記(AJNR文献とMcDonald基準に関して)