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DPP4阻害薬

■作用機序

インクレチンの分解酵素である、DPP4を阻害することで、インクレチン受容体への作用を増強し、膵臓β細胞からのインスリン分泌を促進する機序です。インクレチンは腸管に食事がくると消化管から分泌されることから、血糖値依存的にインスリン分泌を促進するため、低血糖リスクが低く、また食後高血糖に効果があります。

■特徴

・第1選択薬にはならない(必ずメトホルミンが第1選択)
・大血管合併症予防効果がない(単一の薬剤のRCTでは示せていない、meta-analysisではあり)
・低血糖リスクが単剤では低い(SU剤との併用では低血糖リスク上昇するため注意)
・体重増加効果も低い
・投与禁忌が少ない
・1日1回 or 2回投与(トレラグリプチンは週1回)と内服コンプライアンスが良い
・副作用・膵炎、膵臓癌、自己免疫疾患での投与に注意(水疱性類天疱瘡)

DPP4阻害薬は投与禁忌に該当するものが少ないことや、目に見えての副作用が少なく、1日1~2回投与と投与回数も少ないことから投与しやすい薬のイメージがあると思います(実際に多く処方されている薬剤です)。しかし、大血管合併症予防効果は示せておらず、第1選択薬はやはりメトホルミンです。ここでも自分は糖尿病患者さんの何を治療したいのか?(血糖値?細小血管合併症予防?大血管合併症予防?)を意識することが重要です。不必要なDPP4阻害薬が実際には多く投与されてしまっているのではないかなと思います。

ただメトホルミンが使用することが出来ない高齢者やメトホルミン禁忌該当者などではメトホルミンに代わって投与する場合が多いです。

■分類

以下の様に分類されます。基本的に血糖降下効果は以下のどの薬もほとんど同じと考えて問題ないと思います。

特徴があるものを挙げると
腎機能障害でも用量変更なし:リナグリプチン(トラゼンタ®)・テネリグリプチン(テネリア®)
週1回投与:トレラグリプチン(ザファテック®)*腎機能障害高度で禁忌もこの薬剤だけで注意
・アナグリプチン(スイニー®):インスリン、グリニド薬との併用不可
などが挙げられます。

私個人は普段はシタグリプチン(ジャヌビア®)を使って、腎機能障害の患者で用量調節がややこしい場合はリナグリプチン(トラゼンタ®)を使用しています。

■副作用

副作用に乏しいイメージがありますが、実はDPP4は全身に発現しています。このため、自己免疫性疾患や水疱性類天疱瘡などのまれな合併症があります。また膵炎、膵癌のリスクの可能性も指摘されており注意が必要です(Diabetes Care 2019 Nov; 42:2057)。

以上DPP4阻害薬に関してまとめました。使いやすいイメージのある薬ではありますが、薬を処方する以上「何のために処方しているのか?」を明確にする必要があります。DPP4阻害薬は大血管合併症の予防効果が証明されていないため、血糖値を下げる、細小血管合併症を予防する効果しかありません。禁忌事項に該当しない場合は必ずメトホルミンから開始するようにしたいです。