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呼吸生理 治療との対応関係

ここでは我々が呼吸不全に対して行っている治療が呼吸生理のどの要素へ介入しているのかをまとめる。

1:酸素療法

酸素療法は純粋にFIO2を上昇させることで、PAO2を上昇させ、PaO2を上昇させることで酸素化を改善している(下図の赤字部分で表現)。呼吸筋、呼吸仕事、肺の状態を直接改善している訳ではないことを確認したい。

2:人工呼吸器

人工呼吸器での設定項目は多岐にわたるが、それぞれがどこと対応しているかを確認する。FIO2は先の酸素療法と同じである。PEEPと換気量(吸気圧)を設定することでそれぞれ平均気道内圧、換気量を調節することが出来る。また呼吸回数を決めることが出来る。

人工呼吸器は設定する要素が沢山あり混乱しやすいが、それぞれ何と対応しているかを理解するとイメージがついてくると思う。

3:抗菌薬(肺炎の場合)

肺炎での抗菌薬治療は、肺胞レベルでの炎症をおさえることで、肺胞の浸出液を減少させる。そのため肺胞のコンプライアンスを改善させ、またV/Q mismatchを改善させる介入効果がある。

4:除水・利尿薬(心不全の場合)

心不全では肺胞と間質に水がたまってしまう。肺胞での酸素の拡散障害とV/Q mismatchがおこることでAaDO2が開大し、肺胞のコンプライアンスが低下する。また、気管支壁に水がたまることで気道抵抗が上昇する(心不全でwheezesを聴取することが多いのはこのため)。除水はこれらの要素の改善に寄与する(下図参照)。

5:気管支拡張薬

気管支拡張薬(例えばSABA:short acting beta agonist)は気道抵抗を下げる働きがあり、それにより呼吸仕事を軽減する効果がある(下図参照)。

代表的な治療介入に関して、その治療介入が呼吸生理のどの部分に介入しているかをまとめた。特に人工呼吸管理中では、介入要素が複数になるため、どの要素とどの要素が対応しているかを理解しないと混乱してしまうため「呼吸のどの要素へ介入をしているか」を常に意識するようにしたい。