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はじめてのクラシック音楽

クラシック音楽というと、格調高くて古典的で貴族的で退屈で冗長で面白くないというイメージがあるかもしれません。エド・シーランみたいに助走なしですぐに本番という感じの曲ではないと、まどろっこしく思われてしまい敬遠されがちです。

私は元々サークルはオーケストラに属しており、クラシック音楽を恐らく平均よりは多く聴いていると思います。そこで、ここではクラシック音楽をほとんど聴いたことがない方にも、クラシック音楽のイメージを覆すべく「とっつきやすく楽しい」曲を私なりにセレクトしてみました。具体的には①飽きず退屈しない曲(特に曲の入り方が冗長ではない曲)、②演奏時間が長くなく曲、③あまりに有名な曲はつまらないので比較的定番ではない曲という3点の基準から選びました。音楽の趣味は人それぞれなので皆様に刺さらないかもしれないですが・・・。

簡単なコメントとApple musicのリンクを掲載します。そのまま再生ボタンを押すと曲の途中から再生になってしまうため、Apple musicのリンクに飛んで頂き”曲の頭”から聴いて頂けるとありがたいです(曲の頭が楽しい曲を選んでいるので)。

順番通りではなく、適当につまみ食いしていただき気楽に聴いていただけると嬉しいです。

目次

かっこいい疾走感のあるピアノ協奏曲

ブライス・デスナー 二台のピアノのための協奏曲 第一楽章 ピアノ:カティア・ラベック パリ管弦楽団

・勢いと瑞々しさに溢れたピアノ協奏曲で、曲の始まりからその世界観にあっという間に引きずり込まれます。とりあえず第1楽章をおすすめとして挙げましたが、楽しいなと思っていただければ第2,3楽章も是非聴いていただきたいです(こちらも素敵です)。

バルトーク ピアノ協奏曲No.3 第3楽章 ピアノ:エレーヌ・グリモー 指揮:ブーレーズ ロンドン交響楽団

・とりあえず良い音響できちんとした音量で(小さい音量では良さ伝わりづらい)最初から聴いてみてください。始まりから注目です。
・「蜜蜂と遠雷」でもでてくる曲で少し有名になったかもしれません。

プロコフィエフ ピアノ協奏曲第3番 第3楽章 ①ピアノ:アルゲリッチ 指揮:アバド ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 ②ピアノ:エフゲニー・キーシン 指揮:アバド ベルリンフィルハーモニー管弦楽団

・なんとマニアックなと思われるかもしれないですが、実は私がクラシック音楽を好きになったきっかけがこの曲です。たまたま高校生の時に友人がピアノがとても上手で、「エフゲニー・キーシンというピアニストが最高だ」と言っていたので「クラシック音楽って知らないけどまあ暇だしCD借りてみるか」と近くの図書館でたまたま手にとったのがプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番でした。
・最初の方はぼーっと聴いていたのですが、第三楽章になって終わりに近づくにつれどんどんと煌びやかにオーケストラとピアノが互いに共鳴しながら大きな生き物になって動いていく印象があり、当時まだ感性が今よりは豊かだった自分は「これは一体なんなんだ!」と衝撃を受けました。この曲はなんといっても終わりに向けての盛り上げ方が劇的で最高です。
・こうした思い出のある曲なので、色々なピアニストの演奏を聴いているのですが、個人的には最初に聴いたキーシンとアルゲリッチが最も良い演奏かと思っています。この曲はオーケストラとの掛け合いが上手くいかないと曲が簡単に止まってしまうところが難しいですが、この2曲はいずれも素晴らしい融合です。

プーランク  2台のピアノのための協奏曲 D minor FP 61 第1楽章 ピアノ:ルーカス・ユッセン/アルトール・ユーセン 指揮:ステファヌ・ドネーヴ ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

・プーランクはフランスの作曲家でピアノ曲や管弦楽の曲を多く作曲しました。全体的にさわやか、軽やかでおちゃめな部分もある曲が多く「これがフランスか」と思わされます。
・この曲も2台のピアノを普段に使った楽しい曲です。

おしゃれ・素敵系なピアノ曲・管楽器曲

プーランク チェロソナタ 第2楽章 チェロ:ジャン=ギアン・ケラス ピアノ:アレクサンドロ・タロー

・プーランクはピアノと管楽器の曲が多く弦楽器の作品は少ないのですが、このチェロソナタは絶品です。とくに今回紹介した2楽章は冬の夜に静まった街中を白い息を吐きながら歩くような落ち着きのある素敵な曲です。もしよい曲だ!と思われたら是非3楽章も聴いてみてください。

ドビュッシー 「版画」 ピアノ:パルカル・ロジェ

・ドビュッシーはフランスの作曲家でまさに「絵を描くように」、曲が映像としてありありと目の前に浮き立ってくるような音楽が特徴的です。その中でもこの「版画」は3つのパートから構成されていて、本当に目の前と回りの空気が変わるような感覚に陥ります。作家の村上春樹さんも「版画」が好きとエッセイでコメントされていたことがあります。
・ピアニストのパスカル・ロジェさんはフランスの作品を多く演奏されており、フランス系のピアニストでは最も有名なくらいの方です。
・実はパスカル・ロジェさんが大好きで私が大学生のときにパスカル・ロジェさんが来日公演を聴いたことがあります(アーティストの束芋さんの映像とパスカル・ロジェさんのピアノ演奏がコラボレーションするというすごい演奏会でした。またやってほしいなー・・・)。

吉松隆 間奏曲の記憶 「クリスタル・ドリーム サティ&吉松隆 ピアノ作品集」より ピアノ:パスカル・ロジェ

・吉松隆さんは日本の作曲家で、慶応義塾大学工学部に進学後独学で作曲を学んだという異色の経歴の持ち主です。作品はピアノ曲から交響曲など非常に幅広く、現代的かつ自然と融和するような綺麗な曲が沢山あります。
・この作品集はフランスの作曲家サティの曲と吉松隆さんの曲を交互に織り交ぜたもので、良い曲が多いです。色々な曲があるので是非他の曲も聴いていただけると嬉しいです。

吉松隆 デジタルバード組曲 Ⅰ:鳥恐怖症 フルート:上野星矢

・再度吉松隆さんの曲でフルートとピアノによる タイトルの通り確かに「鳥」です(笑)。
・最初このCDのジャケットを見たときは「なんだこのナルシストなフルート奏者は」と感じましたが、いざ演奏を聴いてみると圧巻で「見た目で判断してごめんなさい・・・」という気持ちになりました。
・フルートという楽器の特性と鳥というテーマが見事にマッチしており、現代的で洗練された曲で楽しいと思います。

カプースチン 8つの演奏会用エチュード 1 前奏曲 ピアノ:カプースチン

・とにかくかっこいい曲でロックです。この音源は作曲者自らが演奏しています(最も有名なものです)。

ラヴェル ピアノ協奏曲 G major 第2楽章 ピアノ:アルゲリッチ 指揮:アバド ベルリンフィルハーモニー管弦楽団

・ここまで人の心を揺さぶる感動的な曲はないと思います。人生で一回は聴いてほしい曲といっても過言ではないです。
・マイナーですが”Biutiful”という映画で非常に効果的に本曲が使われています。

コープランド クラリネット協奏曲 第2楽章 クラリネット:Martin Frost 指揮:リチャード・トニェッティ オーストラリア管弦楽団

・奏者のMartin Frostは私が最も大好きなクラリネット奏者で、透き通るようなクラリネットの柔らかい音色と超絶技巧やパフォーマンスも特徴的なソリストです(ちなみに循環呼吸法を身に付けていますのでノンブレスで演奏する場合もあります)。

現代に新しい風を吹き込む古典 and 古楽器

ヴィヴァルディ クラリネット協奏曲(厳密にはクラリネットではないが)第2番 D minor  第3楽章 クラリネット:Martin Frost オーケストラ:コンチェルト・ケルン

・ヴィヴァルディなんて17世紀のド古典でつまらないよと思われるかもしれませんが、ここでは管楽器の協奏曲(ファゴットとクラリネット)でめちゃかっこよく現代的に演奏されている曲を紹介します。

ヴィヴァルディ Concerto RV 495 第 ファゴット:Sergio Azzolini

・この曲ではファゴットが縦横無人に吹きまくり、低音が殴り掛かってきます。音が小さいと良さが伝わりづらいかもしれませんので、できれば低音がしっかり聴こえる設定にするとより良いと思います。

プーランク 田園のコンセール 指揮:小澤征爾 ロンドン交響楽団

・曲自体は古典というほどでもないのですが、使用されている楽器が「チェンバロ」という超古楽器です(私は現物を目の前で見たことすらありません)。ただこれも聴いていただければ分かりますが、「えっチェンバロってこんなにかっこいいの?」という躍動感あふれた曲です。こちらの音源は小澤征爾さんが指揮です。

モーツァルト「トルコ行進曲」のジャズ風アレンジ ファジル・サイ

・良い意味で完全に狂った演奏です。
・ファジル・サイはまさに「鬼才」というピアニストで超絶技巧もなんのその、曲をオリジナルに作り変えてしまうことも得意としています(ストラヴィンスキーの「春の祭典」という非常にオーケストレーションが複雑な曲をピアノにアレンジしてしまったりします)。
・モーツァルトの「トルコ行進曲」は誰でも聴いたことがあると思いますが(曲名でメロディーぴんとこなくても聞けば絶対にわかります)、それをジャズ風にアレンジしており、激しくバイオレントでとても楽しいです。

眠くならないオーケストラ曲

ショスタコーヴィチ 交響曲第5番「革命」 D minor 第4楽章 指揮:ムラヴィンスキー レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

・音楽は本来政治とは無縁の芸術であるはずですが、このショスタコーヴィチ(ロシア人)はソ連の政治に振り回されながらも自分の音楽をどう貫くか?という悩みや思想が音楽に色濃く表れています。
・基本的に曲はシリアスで暗く、人間の本質に迫ろうとする重厚な力があります。
・指揮者のムラヴィンスキーはショスタコーヴィチと親交があり、ムラヴィンスキーの指揮するショスタコーヴィチは気迫が違います。

ストラヴィンスキー ペトリューシカ 指揮:サイモン・ラトル バーミンガム市交響楽団

・バレエ音楽ですが、色彩豊かなで華やかな楽しい曲です。