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追悼:小澤征爾さん

先日小澤征爾さんの訃報がありました。私は大学生のときにオーケストラサークルに所属していたのでクラシック音楽は学生時代に元々沢山聴いていました。残念ながら小澤征爾さんの生演奏を聴くことは一度もなかったのですが、小澤征爾さん率いるボストン交響楽団の演奏が大好きで、CDやiPodで沢山聴いていました。私は小澤征爾さんのどの点が音楽的に優れているということを分析するだけの才能がないのですが、ベルリオーズの幻想交響曲やバルトーク、ツィメルマンとのピアノ協奏曲(ラフマニノフ)など純粋に好きな演奏が沢山ありました。まさにクラシック音楽のレジェンドとして世界で活躍されていた小澤征爾さんの訃報は本当に悲しいです。

また小澤征爾さんの音楽という主戦場ではないですが、小澤征爾さんの書かれた(または対談された)私の大好きな本が3つあります。今回の訃報を機に改めて読み直したいなと思います。

「ボクの音楽武者修行」 小澤征爾

小澤征爾さんは若くして海外へ指揮者の武者修行に旅立ちます。最初はスクーター1つで単身船に乗り込んでヨーロッパへと向かう、若かりし小澤征爾さんの新しい世界へ挑戦する無骨で楽観的な勢いと若い瑞々しさが溢れた素晴らしい自伝書です。

私は確か中学生のときに初めてこの本を読みましたが、文章の勢いに圧倒されてどんどんのめり込んだことを覚えています。折に触れて読み返しており勇気をもらっています。確実に今の自分に大きな影響を与えている本だと思っています。

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やわらかな心をもつ 小澤征爾×広中平祐

この本も確か中学生くらいのときに読んだ記憶があるのですが、世界的な数学者の広中平祐さんと小澤征爾さんの対談本です。後述する村上春樹さんの対談とは異なり、音楽の話はそこまででてこず、教育のことや文化のことなど同世代かつ全く違うフィールドでそれぞれ世界的活躍をされている2人の対談で非常に面白いです。

正直あらかたの内容を忘れてしまったのですが、なぜか以下の文が強く記憶にのこっています。

”小澤 その時ぼくのおやじはね、要するにあれは人間のいちばんの敵だって言うの。今でもよく覚えているけど、ジェラシーっていうの、嫉妬心ていうのかね。それは人間にとっていちばん害になるっていうわけ。(中略)とにかく嫉妬心を殺そうと思った。その時は殺せなかったと思うんだけどね、ほんとうには。でもその嫉妬心を殺すために努力したことが、あとになってとってもいいことになった。得をしたと思うね。”p.55

”広中 ほかの人と比較して誰がどうしたから自分もどうのこうのというような態度というものは、ともすれば小賢しい方へ行っちゃうわけだ。結局自分だけのもの、ほかの誰にもないっていうものをつくれない。ともかく自分のペースで進んで行ってね、そこになんとか自分独自のものを築いて行く方が、結局長い目で見ると得なんだけどね。” p.57

この「嫉妬心を殺そうと思った」という言葉が印象的で、ふとした瞬間にこのフレーズを思い出します。他人と比較しても仕方がなく、自分のペースで前に進んでいくことの重要性をひしひしと感じます。

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「小澤征爾さんと、音楽について話をする」 小澤征爾×村上春樹

小澤征爾さんと村上春樹さんは元々親交があり、そのお二人の対談本です。小澤征爾さんと村上春樹さんがどちらも私の大好きな人ということもあって、お二人の考えをより深く知りたいという思いから折に触れて読み返しています。

村上春樹さんの音楽への感性はとんでもなく優れており、実際に私が音源を聴いたことがある演奏も対談で出てくるのですが、そこでの村上春樹さんの感想やコメントを読むと「あーそんな風に全く思わなかったなー」という描写が沢山あります。

村上春樹さんは20歳代後半~職業作家になるまでの期間元々ジャズ喫茶を営まれており、そこで沢山音楽に触れてきたことも関係しているかと思います。また実際に小説の中でも音楽を意識された具体的な内容、また文章自体のリズムや流れといった文体においても音楽と村上春樹さんは常に繋がっていることを感じます。

そんな音楽に対する造詣が深い村上春樹さんとの対談なので、小澤征爾さん側もどんどん演奏のときの思い出などを話して非常に盛り上がる内容になっています。1年くらいかけておこなわれた対談集であり、その内容の濃さに驚かされます(本書は後から知ったのですが第11回小林秀雄賞を受賞されています)。対談本は正直あまりにレベルが低いもの(とりあえず短時間適当に対談した音声を文字に起こしてささって手直した程度のもの)が多い印象があり私はあまり手にとらないのですが、本書は別格です。

当たり前ではありますがクラシック音楽に関する話題が多いので、確かにクラシック音楽を聴いたことがある方の方が楽しめるかと思いますが、そうではない方も小澤征爾さんと村上春樹さんの生き方、考え方、類まれな感性に触れることができる本としてとても面白いと思います。

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