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副神経 accessory nerve Ⅺ

解剖

1:副神経(nucleus ambiguus) 迷走神経と一緒に走行する→咽頭喉頭
*迷走神経に対しての「副(accessory)」という位置づけ
2:脊髄副神経(C3-5) 脊柱管内を上行→頸静脈孔→頭蓋外→胸鎖乳突筋・僧帽筋を支配

支配筋

僧帽筋 trapezius muscle

・起始:外後頭隆起~項靭帯(第12胸椎まで)、停止:鎖骨外側1/3, 肩峰,肩甲棘
・肩甲骨挙上:①上腕骨を肩甲骨へ引きつける、②上腕を外転,挙上する役割を担う
・僧帽筋麻痺では肩甲上腕関節が外側下方へずれてしまい、肩関節の外転制限(90度まで)を生じてしまう。

臨床的意義
・頸髄C3-5髄節からの脊髄副神経であり,脳神経としての評価として不適(ALS診断における針筋電図で脳神経領域の障害として評価難しい)
・RNSでの被検筋:CSAではwaningを認めないが,ALSでは認める場合があり鑑別上有用(畑中先生、園生先生の報告でよく記載がある)

胸鎖乳突筋 Sternocleidomastoideus SCM

・起始:胸骨+鎖骨、停止:乳様突起(側頭骨)
・①筋と対側に頸部を回旋する作用+②頸部屈曲の作用を担います
*頸部回旋はSCM以外の筋肉も関与する
・呼吸補助筋としても重要
・また身体診察における総頚動脈や頸部リンパ節,後頸三角などの解剖的ランドマーク的な役割も担っている

臨床的意義
・半側麻痺では胸鎖乳突筋は筋と対側(四肢麻痺と対側)の筋力低下を呈するはずですが、機能性神経障害(functional neurological disorder)では「同側」の筋力低下を呈する場合があります(自験例もあります)。
・筋強直性ジストロフィー、rimmed vacuoleを伴う遠位型ミオパチーでは早期から障害

副神経障害の原因

・手術(リンパ節生検が多い)による後頸三角部の障害(最多)
・その他:CEA、外傷、放射線療法後、特発性

文献:副神経麻痺23症例の検討 Can. J. Neurol. Sci. 1991; 18:337-341
・原因:リンパ節生検後(11例), 外傷(10例 *内訳:貫通 3例, 鈍的 4例, 牽引性 3例), 特発性(2例)
・障害分布:単独麻痺 11例(僧帽筋単独 6例, 僧帽筋+胸鎖乳突筋 5例),その他の神経障害合併 12例(1つのみ障害を合併 8例, 複数神経障害を合併 4例)

参考文献
・MMT・針筋電図ガイドブック 園生先生