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全般性強直間代発作(GTCS)後の採血バイオマーカー変化

TLOC(transient loss of consciousness)の鑑別で①Seizureか②Syncopeかはもちろん「病歴が最も重要」であることは誤解を招かいために強調しますが、目撃者が全くおらずに搬送された場合は採血でのバイオマーカーの変化・推移が原因推定に有用です。調べた内容をまとめていきます。

各種バイオマーカーの時間経過での推移

重要文献:Acute metabolic effects of tonic-clonic seizures. Epilepsia Open. 2019 Oct 22;4(4):599-608. doi: 10.1002/epi4.12364. PMID: 31819916
・39回(内訳: generalized onset 6, FBTCS 33)のGTCS(患者32人)のvideoEEGで各種バイオマーカーの採血推移(発症30分以内,2時間後,6時間後,24時間後,48時間後)を前向きに検討(”video-EEG”でありERのセッティングではない点に注意)
結果

GTCS直後の値上昇 *正常上限値の2倍以上ベースラインまで戻る時間GTCS持続時間と 値の相関関係
乳酸8.7倍90%2時間
アンモニア2.6倍71%2時間×
プロラクチン5.1倍70%6時間×
CK6時間後から上昇8.8%(24-48時間後)×

・CK値上昇は10%未満の結果⇔過去の報告では40-60%で上昇とされているが,ERセッティングで純粋にGTCSにより筋収縮の影響だけではなく、長時間臥床などの影響もあるかもしれない
*本文献はfree accessのため掲載

・乳酸値の上昇はGTCSの持続時間と相関関係あり(バイオマーカー中唯一)

乳酸 Lactate

・嫌気性代謝に伴い産生され,AG開大性代謝性アシドーシスを呈します。GTCSでは換気障害による呼吸性アシドーシスも伴い、混同性アシドーシスにより重度のアシデミアを呈することが多いです。
・発作直後から乳酸値は上昇し、その後すぐに代謝されベースラインまで戻ります。最も鋭敏なバイオマーカーです。

文献:Natural history of lactic acidosis after grand-mal seizures. A model for the study of an anion-gap acidosis not associated with hyperkalemia. N Engl J Med. 1977 Oct 13;297(15):796-9.
・直後:乳酸 12.7±1.0 mEq/L, pH 7.14±0.06
・1時間後:乳酸 6.6±0.7 mEq/L, pH 7.38±0.04

アンモニア

・アンモニアは検体の取り扱いに注意が必要で、常温で放置すると値が上昇してしまいます。このため冷蔵保存が必要な点などに十分注意します。
・プリンヌクレオチド回路でのAMP脱アミノ酵素によりアンモニア産生が促進する機序が推定されています。
・抗発作薬のバルプロ酸は副作用としてアンモニア上昇が有名であり、この点は注意が必要です。
・アンモニアはSeizureの「結果」であり,原因ではないと考えられています。

文献:Transient hyperammonemia in seizures: a prospective study. Epilepsia. 2011 Nov;52(11):2043-9
・121例(元々バルプロ酸内服は除外)のSeizureにおけるアンモニア値を前向きに検討
・内訳:GTCS 84.3% 新規発症 52.9% 重積 約10%
・結果:アンモニア上昇は約2/3(67.8%) *ここでのcut off値 94μg/dL
GTCSで上昇する GTCS vs non-GTCS: 174.5μg/dL vs 47μg/dL (76.5% vs 21.1%) p < 0.001
・時間推移は約8時間(平均466分)で低下(250→54μg/dL)を認める
・アンモニア上昇と予後とは関係しない
・参考までにCK値は約1/4(23.3%)で上昇