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「黄色い家」著:川上未映子さん 個人的Book of the Year 2023

今年私(管理人)が読んで最も面白かった本(個人的Book of the year)を紹介させていただきます。川上未映子さんの「黄色い家」です。既に各方面で話題になっている本なので特別私が感想を述べるまでもないのですが、少しだけあらすじを紹介させていただきます。

主人公はまだ15歳の伊藤花(「花」)で、「花」の一人称で本文は語られます(ところどころ回想的になります)。「花」は途中で家出をして、行く先に困っているところで母の友人でスナックのママをしている「黄美子さん」と一緒にスナック「れもん」を始めます。そこで同世代の2人の女性「蘭」、「桃子」に出会い、新たに生活していく過程で「金とは?」、「家族とは?」といったテーマにぶつかり、大人たちに翻弄されながらもがき苦しむ過程が描かれています。

10代の心情を暗い部分までえぐり、思いの丈を慟哭するシーンは圧巻です(これは同じく川上未映子さんの「ヘブン」という作品でも感じました)。途中で「花」と「桃子」が言い合うシーンは、会話のスピードに眼で文字を追うスピードが追いつかない感覚(書かれた文字が遅れている感覚)に陥りました。そのくらい「花」、「桃子」、「蘭」が紙から独立して眼の前で自律的に動き出している感覚があります。川上未映子さんにしかこれは書けないのではないかというくらい神がかった文章です(何かに憑依されているのではないかという恐怖さえ感じます)。

本自体は600ページを超える長編ですが、とにかくスピード感が圧巻でめくるめく展開に衝撃を受け、退屈する瞬間は一度たりともありませんでした。個人的には2023年読んだ本の中でベストです。