注目キーワード

心房細動の対するアブレーション治療

心原性脳梗塞を契機に心房細動がみつかるケースはしばしばあります。この際に循環器内科に外来でアブレーションを検討してもらうかどうか?の基準に関して脳卒中を診療する医師はある程度知識があった方が良いかもしれません(私は勘違いがありました)。先日循環器カンファレンスで心房細動に関してレクチャーで教えていただき、日循のガイドラインを私も読んで勉強させていただいた内容を簡単にまとめます。循環器の先生方で適宜つっこみを頂けますと幸いです。

手技方法

肺静脈隔離術 PVI:期外収縮は肺静脈が起源であることが90%以上であるため NEJM 1998;339:659-66.
①高周波アブレーション
②クライオバルーンアブレーション

適応

有症候性・薬物治療抵抗性・心不全・発作性・若年
①QOL改善:有症候性
②予後改善:HFrEF,頻脈誘発性心筋症など
*元々は症候性のQOL改善が原則であったが、近年予後改善に関して報告があり無症候性サイン防災洞に対してのアブレーション適応を拡大
*脳梗塞2次予防に関しての現時点でエビデンスはない(脳梗塞2次予防のためにアブレーション治療を行うことはない ガイドライン上も推奨はない)

*参考: CABANA trial JAMA. 2019;321(13):1261-1274.
・心房細動患者(2204人)をアブレーション群と薬剤治療群で複合エンドポイント(死亡,脳卒中,重篤出血合併症,心停止)に関して検討したRCT.
・アブレーション群 8.0% vs 薬剤群 9.2%で有意差なし
・この中で脳卒中に関しては有意差なし(0.3% vs 0.6% HR 0.42(0.11-1.62) P=0.19 *ただイベント数が極めて少ない点に注意

アブレーションの効果

・1年間の洞調律維持率 75%(薬剤は45%) NEJM 2021;384;316 5年でだいたい60%くらい

*アブレーション後3か月は”blanking period”といい一過性の炎症や自律神経への影響がある。このためこの間の心房細動は再発とは判断しない。

アブレーション後の抗凝固療法

基本抗凝固療法は継続が必要で、アブレーション治療をすれば抗凝固療法が辞められるようになるわけではない(=抗凝固療法を辞めるためにアブレーション治療を行うことはない
・術後3か月間は抗凝固療法を推奨 推奨Ⅱa エビデンスレベルC
・3か月以降もCHADS2 2点以上は抗凝固療法を継続投与 推奨Ⅱa エビデンスレベルC 日循2018年ガイドライン
*CHADS 1点は判断難しい、左房系や発作性か持続性か?など総合的に判断

参考文献
・日本循環器学会 /日本不整脈心電学会合同ガイドライン 不整脈非薬物治療ガイドライン(2018 年改訂版)