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冒険の書「AI時代のアンラーニング」著:孫泰蔵さん

最近読んで非常に感銘を受けた本を紹介します。本書は「学習・教育」をテーマに私たちが普段当たり前としている価値観や常識に対して強烈にくさびを打ちこむ衝撃的な内容です。学習や教育に興味がある、または関与する人にとっては必読と思います。全体を通じて特に「学校教育」に関しての記述が多くあり、私自身も学生時代を通じて学校教育というものに対して違和感を持ち続けてきたので非常に興味深かったです。

本書は過去の偉人がところどころに出てきて著者と対話をすることで歴史的背景も踏まえて教育についてのわかりやすく、また平易にな言葉で考察を深めていくスタイルで、事前知識は全く必要なく若い人にも読みやすい内容です。哲学を若い人に分かりやすく解説した物語風の「ソフィーの世界」という本をご存じかもしれませんが(私はこの本も大好きでした)、それと似た雰囲気を感じました。

今まで当たり前と感じていた内容に対して「本当にそうなのか?」と疑問を提示し改めて考え直すヒントが本書の中に多数ちりばめられています(以下に例を提示します)。

「遊びと仕事は分断されてよいのか?」

「基礎を固めることが重要というのは本当か?」「そもそも基礎とは何か?」

「元々教育・学校は子供を労働から守るという目的かもしれないが、それは現代でも通用するのか?」

「子供扱いするというのは人類最後の差別ではないか?」「子供と大人を分断する必要があるのか?」

「能力や才能という概念を信仰するあまり不幸になっていないか?」

「メリトクラシー meritocracy 頑張ればみんなできるというのは絵にかいた餅でしかない」

「学校教育は平等という名の元に自己責任論になっていないか?」

「評価は人と違うことをしてはいけないという同調圧力になっていないか?」

こういった非常に興味深いテーマに関して歴史的背景や本を紐解きながら平易にわかりやすく解説していくスタイルで(古典的にはルソーやオーウェン、現代では内田樹など様々な人の言葉が登場します)、私たちの凝り固まった学習や教育(特に学校教育)に対しての常識を氷解していく語り口など非常に感銘を受けます。また、まさに今ホットトピックであるAI時代での教育の在り方というテーマに対しても考えさせられます。

本書でも出てくる表現ですが”思考停止は必ず手段が目的化してしまう”という事を改めて強く感じました。

私自身がこの1年間読んだ本の中では最もおすすめする書籍です。Amazonのリンクを下に貼っております(挿絵が多いのでKindle版は文字の大きさの調整ができず少し読みにくいかもしれません)。もしも読まれましたら是非感想をコメント欄で頂けるとありがたいです。