脳膿瘍疑いの患者さんの血液培養検査からS. intermediusが検出され、勉強した内容を簡単にまとめます。
全体像
・分類:Streptococcus anginosus group
1: S.anginosus
2: S.constellatus
3: S.intermedius
*Viridans Streptococcus属:S.anginosus groupと非S.anginosus groupの2つに分類
(後者の非S.anginosus groupがIEリスクが高い)
・常在:消化管・口腔などの細菌叢に存在している常在菌
*S.intermediusは歯プラークに多い, S.anginosusは消化管に多い
*参考
臨床像
・1.膿瘍形成や2. 感染性心内膜炎(Streptococcusの原因3-15%を占める)に注意
・脳膿瘍:S.anginosus属と関係性が深い・約50-80%において本菌が検出される
*S.intermediusが3つの菌種の中で最多原因である・口腔内で認めるが脳膿瘍は消化管由来の可能性が示唆されている
*脳膿瘍に関してはこちらもご参照ください
・頭頚部感染症:歯関連感染→歯科処置による一過性菌血症により別の部位に膿瘍を形成する場合がある
・消化管感染症:肝膿瘍・腹膜炎・PID・横隔膜下膿瘍・中推薦・胆管炎など
*S.anginosusに効果の無い抗菌薬を使用しているとその他の腸内細菌が抑制されることで感染症を起こしやすいとされている(特にメトロニダゾール±ゲンタマイシンはBacteroides, Fusobacterium属などを抑制することで起こりやすい)
*S.angionosus, S.constellatusが原因菌として多い
・肺感染症:肺化膿症・膿胸・縦隔炎など
*肺感染症のリスク因子:男性、過去の肺炎、アルコール依存、腫瘍、cystic fibrosis
*S.constellatus, S.anginosusが原因菌として多い
*参考:Streptococcus属による感染性心内膜炎の頻度 Circulation. 2020;142:720–730.
*参考:S.intermedius感染症の101例検討review Front Microbiol. 2020 May 7;11:826.
・患者背景(n=101):年齢44.8歳(5-83歳), 男性63.1%, リスク因子: 歯科治療 18.8%, 副鼻腔炎 11.9%
・感染臓器:脳膿瘍 41.6%>肺 12.9%>肝臓 7.9%/脊椎 7.9% *既報でも脳膿瘍との関連が深い J. Clin. Microbiol. 1992; 30: 243–244.
・菌の検出:膿瘍 34.7%>脳 16.8%>血液 14.9%>脳脊髄液 6.9%
・膿瘍形成:98%
・共感染:29.7% 内訳 S.anginosus 10%, S.constellatus 13.3%, その他streptococcus, その他 Actinomyces属 13.3%, Fusobacterium 6.7%, Staphylococcus属 13.3%
治療
ペニシリンG *膿瘍はもちろん外科的なドレナージが必要
参考:Mandell