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膝痛へのアプローチ

膝関節痛は高齢化社会でcommonかつ、化膿性関節炎や偽痛風などの関節炎の罹患関節として非常に多いため重要です。関節穿刺の中で膝は非専門医でも実施できるようになるべきです。その他ランニングなどで膝が痛くなることも多いと思いますので、日常医学として何科の医師であったとしても基本的な事項は習得するべきです。ここも拙著「内科診療ことはじめ」に準拠した内容です。

基本的な解剖・診察方法

ROM:伸展、屈曲、外反、内反

触診

1:伸展位→関節液貯留の評価
触診:膝が大腿よりも温かいかどうか?
*検者は手の甲で大腿と膝を触診する(掌側は温かいためわかりにくくなるため)。通常膝は血流に乏しいため大腿よりも冷たいが、膝の方が大腿よりも温かい場合は異常所見。

膝蓋跳動(BOP): 膝蓋骨が上下に動くかどうか?(関節液貯留を示唆)
bulge sign:外側に関節液を絞り出し、外側から軽くtapし内側に波動を感じる(関節液貯留を示唆)

2:屈曲位→各解剖部位の評価
内側/外側関節裂隙:屈曲位で膝蓋腱の左右脇のくぼみを触診
・鵞足の脛骨付着部(内側関節裂隙やや前下方)を確認

3:特異的な診察 *ここ外傷性の原因診察であり、非専門医には敷居が高い
・側副靭帯損傷を疑う場合:内反ストレステスト・外反ストレステスト
・前十字靭帯損傷や半月板損傷を疑う場合:Lachman’s test, Anterior drawer test, Lateral pivot shift test, McMurray testなど

原因

前部
・膝蓋前滑液包炎 *ADL低下により膝を地面に擦って移動する人に多い
・膝蓋腱(Osgood Schalatter病など) *小児期サッカーなどで多い
関節炎(感染性、結晶性、関節リウマチなど様々)

外側/内側
・半月体損傷:基本外傷
・靭帯損傷:内側・外側側副靭帯損傷、前・後十字靭帯損傷
・鵞足包炎(内側)、腸脛靭帯炎(外側)*いずれも使いすぎ(over use)が原因・特にランナーに多い

後部
・ベーカー嚢胞(特に破裂)*深部静脈血栓症、蜂窩織炎と鑑別となります。関節液が貯留して後方へ行くことにより生じます。
*股関節の病変が膝痛の場合もあり注意(放散痛)

疾患の各論

patella-femoral joint

・”the low back pain of the knee”非常に多い 治療聴きづらい
・ポイント:女性・両側・膝前疼痛・階段降りるといの疼痛(長時間座る・スクワット)
*骨盤の角度から大腿骨が外側に女性はなりやすいため、力のベクトルが垂直ではなく傾いている 外側へ大腿四頭筋が膝蓋骨を引っ張る
診察:patella-femoral joint mobility 膝蓋骨を外内側へ動かす 通常膝蓋骨の25-75%動く <25%は異常と判断する

靭帯損傷

・靭帯の役割:関節を安定させる 側副靭帯+前十靭帯・後縦靭帯
・外傷などがない患者さんの膝痛で靭帯障害の可能性は低い 靭帯の柔軟性はひとそれぞれ異なる
・”pop”→膝靭帯障害の重要なclueとなる
・半月板よりも靭帯の方が血流豊富である→関節液貯留してくる(血性)
*半月板損傷ではもっとゆっくりの経過である

・診察:anterior drawer test:ITBが屈曲する役割を担ってしまうことで偽陰性になる可能性あり→Lachman’s testの方が優れている
*実際には靭帯の身体診察は急性期は疼痛が強すぎて難しい事多い
・画像検査:レントゲンは骨折除外目的
・治療
*側副靭帯は関節外に位置し血流あるため通常自然治癒する(手術必要なし) 
*前十靭帯などは側副靭帯とは異なり、血流が乏しいため自然には治らない(手術必要)

半月板損傷

・25歳未満で損傷することは外傷なければまれである *50歳以上ではスクワットなどのsimpleの動作で障害される可能性がある
・疼痛:関節裂隙のラインに位置する(内側・外側)
・診察:疼痛・深屈曲で疼痛・McMurray’s test
・MRIではなく関節鏡を行うべきと記載あり *managementが変わらないため
*70歳以上では膝MRIの解釈難しい 無症候性の半月板損傷がよくある それだけで膝痛の原因と断定はできない

レントゲン

・正面・側面・スカイライン(膝蓋骨の撮影)

*靭帯損傷はレントゲンではわからずMRI検査が必要(整形外科に相談)

参考文献
・Practical office orthopedics:整形外科非専門医は是非読もう!