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手指疼痛へのアプローチ

解剖

1)骨の名前

・手指骨:基節骨、中節骨、末節骨(近位~遠位にかけて)*母指は中節骨がない
・中手骨
・手根骨:近位3つ(舟状骨・月状骨・三角骨)と遠位4つ(大菱形骨・小菱形骨・有頭骨・有鈎骨)+豆状骨の8つから構成

2)関節の名前

・DIP(distal interphalangeal)関節:末節骨と中節骨の間
・PIP(proximal interphalangeal)関節:中節骨と基節骨の間
*IP(interphalangeal)関節:母指の末節骨と基節骨の間
・MCP(metacarpal phalangeal)関節:基節骨と中手骨の間
・CMC(carpo metacarpal)関節:中手骨と手根骨の間(母指以外は分かりにくい)
・手関節:RC(radiocarpal)関節(=橈骨手根関節)

診察方法

ROM 手関節:背屈・掌屈・撓屈・尺屈を確認
関節の触診:皮膚の「しわ」の部位と実際の関節裂隙の部位がずれている(骨頭のやや遠位に関節裂隙がある)ため注意が必要。
・DIP関節、PIP関節、MCP関節、手関節をそれぞれ診察(手背側から触る)。

DIP関節の障害:変形性関節症・乾癬性関節炎(DIP関節は滑膜が少ないため関節リウマチでは通常障害されない)

MCP関節の障害:関節リウマチ、偽痛風などを考慮する。変形性関節症でMCP関節の障害はまれ(変形性関節症はDIP関節、PIP関節、母指CMC関節を障害する)

屈筋腱の診察:圧痛、屈曲拘縮、伸展時の疼痛を確認

疾患各論

手根管症候群

手の疼痛原因として多く重要です。こちらを参照ください。

ド・ケルバン腱鞘炎(de Quervain腱鞘炎)

第Ⅰ伸筋区画(長母指外転筋・短母指伸筋)の非外傷性腱鞘炎で繰り返し手首をひねる動作で腱に炎症が起こることにより生じる(あまりなじみがないかもしれませんが遭遇頻度とても高いです!!)。
・スマートフォンのフリック入力、ドライバーを回す、アイスクリームをすくいとるなどの反復する動作が誘因となる場合があるが、明らかな誘因を認めない場合もあります。
・身体所見では橈骨茎状突起部の疼痛・Finkelstein test陽性(母指を掌側へ屈曲、手首を尺側に倒すことで疼痛が誘発)を認めます。
・治療:固定(サポーターなど)+ステロイド治療

Finkelstein test

CMC関節症

・母指のCMC関節は全方向の可動性を担うため手指関節の中で最も摩耗しやすく, OAを生じやすい部位です。
母指疼痛の2大原因はド・ケルバン腱鞘炎とCMC関節のOAです。
・”CMC grind test”は母指を円軸方向・手関節方向にぐーっと押し付けて回旋させることで疼痛を誘発する診察方法で、豆を臼でひくような動作に似ているため”grind test”と名付けられています。

ばね指

・普段私たちはパペットの様に指を動かしています。これは指の切断面をみると筋肉が存在しないことからわかるように、腱が通過しているだけで、この腱を引っ張りあうことで指を動かしています
・もしも指内に筋肉が存在していたら分厚いため可動域制限が生じて細かい動きがしづらくなってしまうかもしれません。
・そして手指屈曲側にはこの腱が通過する「わっか」が存在してこれをpullyと表現します。
・このpullyに炎症が生じて腱が引っかかってしまう(特にA1 pully)と屈曲位置で固定されてばね指となります。一般的には環指での屈曲位固定が多いです。

化膿性屈筋腱鞘炎

・屈筋腱の細菌性感染症で、動物咬傷や外傷が誘因となる場合がある手指疼痛の緊急性の高い疾患(整形外科で外科的介入が必要となる場合がある)として化膿性関節炎に並んで重要です。
・4点に着目します(”Kanavelの4徴”)。

1: 手指のソーセージ様腫脹
2: 手指屈曲位
3: 他動手指伸展による疼痛誘発
4: 屈筋腱の走行に沿った圧痛

・解剖的に屈筋腱鞘は母指と小指は指先から手根部まで連続しており、その他3指はMCP関節部分で終わる構造になっている。Thenar/midpalmar spaceを経由して感染が波及する場合がある。