内科医で股関節痛を診療できない訳にはいけません。ここも拙著「内科診療ことはじめ」に記載している内容に準拠していますが、おおまかな鑑別アプローチを身に付けます。
原因
・まず最初のアプローチは股関節の前方・側方・後方いずれの部位に疼痛があるか?という点から鑑別をすすめていきます。
・3大疾患は股関節炎・大転子滑液包炎・腰椎疾患からの放散痛でありこれらで原因の90%以上を占めるとされています。その他は大腿骨頭壊死, FAI(femoral-acetabular impingement)などが挙げられます。
1:股関節前方
・関節内病変:大腿骨頸部骨折、関節炎(関節リウマチ、感染、OAなど)、大腿骨頭壊死
*股関節内の問題は股関節前方・鼠径部に疼痛を認める点がポイント
・滑液包炎:腸腰筋(ボートなどの反復運動)
・リンパ節炎
2:股関節側方
・大転子滑液包炎(ROM制限は認めず、外側に疼痛を認める)側方の疼痛原因として最多で患側を下にして寝るときに疼痛が増悪します。病歴と身体所見のみから診断可能で画像検査は必要ありません。
・付着部炎(上前腸骨棘)
・異常感覚性大腿神経痛(外側大腿皮神経の絞扼性障害)*こちらを参照
3:股関節後方
・坐骨神経痛
・仙腸関節炎
診察方法
・体表から深い部位に位置する関節は触診が難しく、特に股関節の触診は困難です。このためROM制限や他動的な疼痛誘発により確認する必要があります。
股関節のROM(屈曲、伸展、外転、内転、内旋、外旋)
・股関節の関節腔は内旋で最も狭小化するため、股関節疾患は内旋で疼痛が誘発されやすいです。股関節の内旋・外旋は股関節を90度屈曲させ、下腿を持ち行います。 *あぐら(股関節外旋)が楽な姿勢からイメージしよう
・内旋・外旋は混乱しやすいですが膝の方向が「内」側が「内旋」、膝の方向が「外」側が「外旋」とすると覚えやすいです。 ポイント:膝の向く方向で内外旋を覚えよう
Patrick test
・下肢で4の字を作るようにすることで上から圧迫して評価します。
・疼痛誘発がある場合は患側股関節または対側仙腸関節の問題を示唆します。