脳底動脈閉塞は脳梗塞の中でも極めて神経学的予後が不良なものです. 脳底動脈閉塞に対する血管内治療は元々「救命目的に行うかどうか?」という立ち位置にありましたが, 2022年にNEJMで2つのRCTが発表され, 機能予後改善の意味でも流れが大きく変っています. ここではこの2つのRCTに関して取り上げます.
“ATTENTION” N Engl J Med 2022;387:1361-72.
まとめ図
Subgroup analysis
・血栓回収に伴う頭蓋内出血は約5%, 既報は約4-8%と報告されており概ね合致する.
limitation
・中国に限定(日本にとっては同じアジアとして良いことだろう)
・軽症例や12時間以降の症例にはこの結果をそのままapplyできない
・経静脈血栓溶解療法は約1/3とやや実施が少ない(既報のBASICSは約80%に実施) この点が内科治療群にとって不利に働いた可能性はある
管理人の感想
・軽症例ではなく中等症に限った点がやはりこの臨床研究のdesign上優れている点だろう。再開通療法はやはり中等症以上で有意差がつきやすい。
・確かに経静脈血栓溶解療法の実施が全体の約1/3と少ない点は内科治療群にとって不利であった可能性はあるが、実臨床の実感として脳底動脈閉塞に経静脈血栓溶解療法はほとんど効かない印象があるためそんなに関係ないかもしれない。
・今までの臨床研究で白黒はっきりしなかった点に、かなり優れたdesignを導入することで1つ見解(answer)を出せた点が優れていると思う。
“BAOCHE” N Engl J Med 2022;387:1373-84.
まとめ図
subgroup analysis
Limitations
・study protocolの変更(極めて大きい), primary outcomeの機能予後を変更している
・病型がアテローム性が多く, 塞栓症が多い西洋ではそのまま適応できないかもしれない
・中国に限定(アジアなので日本人には良いデータ)、また女性のデータがかなり少ない
・経静脈血栓溶解療法が全体の18%と少ない
管理人の感想
・やはりstudy designを途中で変更した点は大きなlimitationである。
簡単なまとめ
・脳底動脈閉塞症例において血栓回収療法は生命予後だけでなく、機能予後改善において有用である
・軽症例(NIHSS<10点)ではこれらの結果はそのままapplyできない点には注意