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イラストで理解する「てんかん重積」

この記事は初学者向けにてんかん重積のイメージをつかみやすくするため比喩とイラストを用いて解説したものになります。よく「てんかん重積」は「火事」に例えられます。この例えは様々な書籍でされており私の新規性は一切ありません。唯一イラストは私が自分でいそいそと書いた独自のものです。理解の参考になりましたら幸いです。この記事では以下の例えを使用し、対応関係を先に記載しておきます。

・家=脳
・火事=てんかん重積
・火の粉=発作間欠期
・消火器=抗てんかん薬
・消防車=てんかん重積での治療薬(ベンゾジアゼピン系など)
・監視員=脳波

「てんかん重積」と「発作間欠期」の治療

てんかんの患者さんは発作がない期間(=発作間欠期)はふつうに生活されています。この期間は発作が起こらないように予防の意味で抗てんかん薬を内服しています。これは火の粉が大きくなって火事にならにように常日頃から消火器で火の粉を消しているイメージです。

その一方でてんかん重積は火事なので消火器のような小さな道具では戦うことが出来ず、消防車を呼ぶ必要があります。つまり、第1段階(ベンゾジアゼピン系)、第2段階(レベチラセタム・ホスフェニトインなど)、第3段階(ミダゾラム・プロポフォール持続静注など)とてんかん重積の治療を行います。

てんかん重積のときに手持ちの消火器で戦ってはだめで、必ず119番通報して消防車を呼ぶ必要があります。この判断がときおり間違っていることがあるため十分注意が必要です。

上記の内容をまとめると下図の通りになります。

てんかん重積が長時間持続すると機能予後が悪い

短時間の火事であれば消火活動によって速やかに鎮火されれば家は崩れずにそのまま保たれる(=脳機能が保たれる)かもしれません。しかし、もしも鎮火作業がはじまるまで火事が長時間持続していた場合はたとえ鎮火できたとしても家はすでにボロボロの状態に壊れてしまっている(=脳機能が障害される)かもしれません。このことからわかるように火事が起こった場合すぐに鎮火作業にとりかかる必要があります。

「けいれん性」てんかん重積と「非けいれん性」てんかん重積

もちろん火事が外からみてすぐにわかるもの(=けいれん性てんかん重積)なら問題ありません。しかし、実際には外からみても分からないけれど家の中で実は火事が起こっている場合(=非けいれん性てんかん重積)があります。後者の非けいれん性てんかん重積を見つけるためには脳波検査必要となります(以下)。

通常の脳波検査と持続脳波検査

普段行う通常の脳波検査はだいたい30分程度記録を行いますが、これは監視員が家を30分だけ監視しているようなものです。

持続脳波検査は24時間記録を行い、これはつまり監視員が24時間ずっと家を監視していることになります。

実は家の中でこっそりと火事がおこりはじめていた場合、前者の通常の脳波検査では24時間のうち23時間30分は監視員がいない状態なので火事が起こったことに気が付くことができず炎が大きくなってしまう可能性があります。しかし、後者の持続脳波検査では家で火事が起こったら監視員が常駐しているためすぐに気が付くことができ、速やかに消火活動を行うことが出来ます。これが持続脳波検査のメリットです。

私なりに可能な限りシンプルにまとめました。てんかんはとっつきづらい印象があるかもしれませんが、イメージを持ちながら対応すると理解しやすくなると思います。