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脳室周囲異所性灰白質 periventricular heterotopia

病態 ・遺伝子

・発生の過程で脳室周囲(側脳室)の神経細胞が皮質に遊走されずに同部位にとどまる場合をperiventricular heterotpiaと表現する.

Filamin A(FLNA)(遺伝形式 X-linked dominant, 臨床像:知的発達障害なくてんかん合併・女性がほとんどで男性は致死的)*point mutations, deletionsいずれもあり(後者が多い) Neuron 1998;21:1315–25.
*codingしているたんぱく質(F-actin-binding cytoplasmic cross-linking phosphoprotein filamin A (FLNA))はneuronal migrationに関与している
ARFGEF2(遺伝形式 AR, 臨床像:発達障害+microcephaly)*heteroでは臨床像を呈さない Nat Genet 2004;36:69–76.

臨床像

てんかん・seizureに関して
・青年期に発症する場合もある、程度は軽度なものから治療抵抗性のものまでさまざまである
・異所性灰白質の程度と臨床像との重症度・対応関係は不明確
・深部電極の研究からは異所性灰白質の場所から異常放電が出ている(Neurology 1998;51:1723–7.)、それを取り除けはseizure freeになる場合もあれば(J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2014;85(6):611 – 7.)、それらが皮質と電気的に連結する場合もありネットワークを形成する場合もある Epilepsia. 2017;58(12):2112 – 23.
・これらは抑制と興奮のバランスが崩れているためにてんかん発作を生じると考えられる(Brain Pathol 2002;12:212–33.)

頭皮上脳波:どの結節が原因なのか?複数ある場合どれが原因なのか?皮質は関与しているのか?ネットワーク形成はどうなっているのか?という点に関して答えが分からない問題がある。
→このため深部電極や非侵襲的な方法としててはfunctional MRIを組み合わせた方法などが検討されている。

Filamin A遺伝子異常の合併:Ehlers-Danlos syndrome, 関節可動性亢進, 若年での大動脈拡張

画像所見

Filamin A:連続的な側脳室周囲の異所性灰白質・脳梁の菲薄化・後頭蓋窩の形成不全(小脳低形成やcisterna magnaの拡大)

ARFGEF2:小脳症、脳室軽度拡大、髄鞘化の遅れによる白質変化

分布による違い:前方主体はFLNA遺伝子によるもの、後方主体はFLNA陰性で皮質形成異常や灰白質形成不全、小脳や中脳被蓋の形成異常を伴う場合が多い

てんかんの治療

■抗てんかん薬反応性様々(16例の解析) J Neurol Neurosurg Psychiatry 2004;75:873–8.
・ここではsimple PNH(知能正常・発作は焦点由来が多く・20歳代に多い・頻度は増加しない)とPNH plus(発達障害を伴い・抗てんかん薬に抵抗性)とに分類して解析
・simple PNH:8例・24-31歳(27.6歳)・てんかんの家族歴は全例なし・知能指数は全例正常で奇形合併もなし・発作の発症は17-22歳(19.2歳)・発作型はfocal2例, focal to bilateral6例・経年的にseizure頻度は減少
・PNH plus:8例・15-48歳(30.6歳)・1例以外家族歴なし・知能発達障害6例であり、顔面奇形は2例であり、発作の発症は1-14歳(4.25歳)・発作型は様々・発作頻度は多く減少せず、治療抵抗性

■外科的治療:深部の構造のため脳をどうしても傷つけざるを得ず外科的治療介入は長年選択肢としてあがってこなかったが、近年レーザーアブレーション治療の進歩によりこの根本治療の分野にも脚光が当たっている。SEEG-guided radiofrequency thermocoagulation(RFTC)やMRI-guided laser interstitial thermal therapy(MRg-LITT)

Epilepsy Res.2014;108(3):547 – 54. 

参考文献
・Epilepsy Behav. 2005 Sep;7(2):143-9.  脳室周囲異所性灰白質のreview
・Brain (2006), 129, 1892–1906
・Current Neurology and Neuroscience Reports (2020) 20: 59 ”Treatment of Epilepsy Associated with Periventricular Nodular Heterotopia” 治療に関しての最新のまとめ