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infected subdural hematoma 感染性硬膜下血腫

慢性硬膜下血腫は日常臨床で非常によく遭遇しますが、同部位に感染をきたす症例は今回初めてです。勉強した内容をまとめます。一般的な慢性硬膜下血腫(CSDH: chronic subdural hematoma)に関してはこちらをご参照ください。

47例をまとめたliterature review(これが最大の報告) World Neurosurg. (2016) 87:663.e1-663.e8.

・全体のhematomaのうち感染性は1%と報告されている
・2015年までに46例の既報告+今回の症例報告=計47例
・性別:男性30、女性17例 年齢:小児11例、成人36例 6か月から88歳(49歳)
・起炎菌:大腸菌13例(27%)、Salmonella8例(17%)、黄色ブドウ球菌6例(13%)、連鎖球菌5例(10%)、クレブシエラ4例(9%)、Campyrobacter fetus4例(9%)、その他13%、不明2%
・感染源(全身の):不明23例(50%)
・治療:抗菌薬+手術(術式以下)
 開頭術12例(26%)  再手術は1例 予後は10例後遺症なし、2例後遺症あり
 穿頭術34例(72%) 9例治療失敗 3例再度穿頭術、6例開頭術に切り替え 予後は25例後遺症なし、2例後遺症あり、7例死亡

*管理人のひとことまとめ
・”subdural empyema”とは違う病態で非常に報告は少ないですが、予後は悪く早期に気が付くことが重要な病態。
・起炎菌でE.coliが最多で、全身の感染源が不明が約半数。
・術式は開頭術、穿頭術いずれも報告あるが開頭術の方が予後良い傾向あり。

画像で感染性をどのように鑑別するか? Clin Neurol Neurosurg. 2020 Jul;194:105831.

・ISH30例(既報から抽出)とコントロールとしてCSDH102例を比較
DWI高信号やCT値での鑑別は困難
形態 biconvex shapeが感染性を示唆する所見である(下図参照)

ご経験ある先生是非ご教授いただけますと幸いです。