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Wilson病

遺伝子・病態・臨床像

・遺伝形式:AR(遺伝子ATP7B) 先天性銅代謝異常症 日本全国約1500人程度と推定
・病態:肝臓からの銅排泄障害による様々臓器への銅沈着(非セルロプラスミン結合銅は臓器に蓄積:肝硬変・錐体外路症状)
・銅は小腸から体内に取り込まれ、肝臓でセルロプラスミンと結合し血液中を流れる
・血液中の95%はセルロプラスミンと結合しており、臓器に銅を供給することはない(役割としては鉄の酸化作用を担っている)
・血液中の残り5%は臓器へ供給し、尿から体外排泄、また肝臓から胆汁を経て便として排泄
若年の錐体外路症状(不随意運動・パーキンソニズム)を呈する患者で必ず考慮する

Kayser-Fleischer角膜輪:特徴的であるが若年例や軽症例では認めないため注意

検査

血液検査血清セルロプラスミン低値・尿中銅排泄量増加
*アポ型セルロプラスミンがそのまま血液中に分泌されるが、血液中で極めて不安定であるため血清セルロプラスミンは低下する(Wilson病では銅がセルロプラスミンと結合しない)
*約5%程度セルロプラスミン値正常例があるため注意

確定診断法:ATP7B遺伝子解析・肝生検(銅含有量定量)

画像所見MRI:両側対称性・被殻(外側外包に接する部分)+尾状核+淡蒼球+小脳歯状核(+中小脳脚)のT2WI高信号

治療

1:銅キレート製剤 塩酸トリエンチン(商品名:メタライト)、D-ペニシラミン(商品名:メタルカプターゼ)
2:酢酸亜鉛 食事中の銅吸収を阻害する作用を有する

*銅摂取を控える:Cuを多く含む食べ物(貝・甲殻類・レバー・豆・穀物・ココア・チョコレート)

*遺伝性代謝疾患のうち数少ない治療介入可能な疾患として認識しておくことが重要