注目キーワード

ハンチントン病 Huntington disease

遺伝・病態・疫学

遺伝形式:AD 遺伝子:HTT(huntingtin)
ポリグルタミン病 第4染色体 CAG repeat anticipation(表現促進現象:世代を経るごとに繰り返し数が増大して発症年齢は若年化・重篤化)を認める
通常:26回以下
異常:36回以上(27-35回はgray zoneになっている)

発症:いずれの年齢でも発症しうる(平均30才代)
*20才以下(若年型):10% 以下の特徴を有する
・運動症状を呈するのは1/3程度:dystonia、歩行障害
・精神症状、認知機能障害から起こることが多い
・てんかん:10才以下にて1/2~1/3に認める(若年型にて頻度が多い)
・薬物乱用、アルコール使用、万引きなどで学校生活、社会生活での支障をきたすことが契機となる場合もある

疫学:prevalence worldwide:2.7/100,000, Europe/North America:5.7/100,000, Asia:0.4/100,000
日本は欧米と比較して有病率が少ない(約1/10程度) *founder effectあり

臨床像

運動症状:chorea

・choreaが主体(choreaに関してはこちらをご参照ください)
・障害部位で前頭部は通常tardive dyskinesiaでは認めないため、forehead choreaがHDにおいて有用な症候
徐々にchoreaは増悪し、プラトーに達し、parkinsonismが目立つ経過をだどる
・進行してくると錐体外路症状も合併し、”Parkisonian akinetic-rigid state”になってくる
・また横隔膜や咽頭の筋肉にも不随意運動が出現すると、構音障害、嚥下障害、involuntary vocalizationが出現する
・日常生活の合目的な運動と混ざって表現してくるため本人が自覚していない場合もある
・症状がかるいとただ落ち着きがないだけと判断されてしまう場合があるため注意が必要である
*錐体路徴候は伴わない場合が多いとされています

精神症状

・うつ、易刺激性、性格変化、社会性の低下
・感情のコントロールが難しくなる
・運動症状の前に発症することがある
・精神症状はCAG repeat回数や病期の長さ、運動症状の有無などと相関関係なし
・自殺:非常に多く問題である(7%程度)
*この点に早期から介入する必要がある・運動症状ばかりに目をとられていてはいけない

認知機能障害

・subcortical dementia
・記憶・遂行機能の障害を認める

*病名が「ハンチントン舞踏病」ではなく「ハンチントン病」であるのは、ただchoreaが問題なのではなく後者に紹介した精神症状や認知機能障害が大きな問題となるためです。

その他

眼球運動障害:サッケード運動開始の遅延”delayed initiation of saccades”がHDの眼球運動の特徴として重要

・体重減少:原因は分からず

検査

遺伝子検査:確定診断に必要

頭部MRI検査:尾状核の萎縮(随伴する側脳室拡大)が特徴的(ハンチントン病に特異的な訳ではない)

*鑑別診断としては有棘赤血球舞踏病、SCA17、DRPLAなどが重要
*有棘赤血球舞踏病では咬舌と末梢神経障害を認める点がハンチントン病との臨床上の鑑別点とされています

治療

根本治療は現在まだ確立なし・対症療法

参考文献
・ CONTINUUM (MINNEAP MINN) 2019;25(4, MOVEMENT DISORDERS):1001 – 1035.