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超高齢心房細動患者さんへの低用量エドキサバンに関して ELDERCARE-AF study

超高齢の心房細動患者さんに対して抗凝固薬をつい出血リスクから躊躇してしまうことが多いかもしれませんが、低用量のDOACは効果があるのか?という臨床的な疑問に答える臨床研究が”ELDERCARE-AF”studyです(引用:N Engl J Med 2020;383:1735-45.)。日本で行われた研究ということもポイントです。通常のDOACに関してはこちらにまとめがあるのでご参照ください。

ELDERCARE-AF study

PICOを含めたまとめは下図の通りです。

結果をまとめると「塞栓合併症に関して低用量エドキサバン群が有意に少なく、大出血に関して有意差は認めなかった」という結果になります。ただ消化管出血に関しては低用量エドキサバン群が有意に多く、secondary outcomeに設定されているclinical net benefitに関しても有意差は認めませんでした。

低用量エドキサバンの効果に関しては、一般的にワーファリンもDOACも塞栓合併症は相対的に2/3程度リスクを軽減するとされており、今回の結果もそれに合致するものと思います。

サブグループ解析に関しては下図の通りです。

本研究のlimitationとしては出血を懸念しての脱落患者さんが多いという点が一番に挙げられると思います(ITT解析ではありますが)。

本研究を実臨床にapplyする際の注意点はあくまでもinclusion criteriaで示されている様に「出血リスクを有し通常量のDOACが不適と判断された患者」に限定しているという点です。つまり「なんとなく高齢だから低用量DOACにする」というプラクティスは認められていない点に注意です。

実際超高齢者で出血リスクを有する患者さんに抗凝固薬をどうするか?という懸念を持つことは臨床上多いので今回の研究が参考になる場合もあるかなと思います。

エドキサバン(商品名:リクシアナ)15mgの適応

この研究を踏まえた上でリクシアナ15mgの適応が2021年9月より追加となりました。以下をご参照ください。

目的:非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制
■高齢の患者(80歳以上を目安とする)で、以下のいずれも満たす場合、治療上の有益性と出血リスクを考慮し
て本剤投与の適否を慎重に判断し、投与する場合には本剤15㎎を1日1回経口投与することを考慮すること。
■次の出血性素因を1つ以上有する。
 ・頭蓋内、眼内、消化管等重要器官での出血の既往
 ・低体重(45㎏以下)
 ・クレアチニンクリアランス15mL/min以上30mL/min未満
 ・非ステロイド性消炎鎮痛剤の常用
 ・抗血小板剤の使用
■本剤の通常用量又は他の経口抗凝固剤の承認用量では出血リスクのため投与できない。

参考:第一三共株式会社のホームページより