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ランブル疣贅 Lambl’s Excrescences

本日TEEをやっていた際にランブル疣贅(Lambl’s Excrescences: LEs)の指摘があり、これが塞栓源か悩む症例がありました。TEEで偶発的に認めることも多いランブル疣贅に関してまとめます。

解剖

・1856年にランブル(Lambl)先生が発見し、主に大動脈弁の弁接合部に認める弁の摩耗により生じる変性構造物です。弁尖部のところの心内膜が傷つき、同部位にフィブリンが沈着し心内膜組織が過剰に育つことで乳頭状の構造に変化し、最終的に線維化します。通常は厚さ<2mm、長さ5-10mm程度とされていますが、2.5cmくらいになる大きなランブル疣贅も指摘があります。
・多くの場合これらは無症候で、弁破壊も伴わないため弁逆流なども認めない場合が多いですが、これらは塞栓原となりうる可能性が指摘されており、塞栓原不明の脳梗塞などで特に重要な構造です。

・下図が具体的な図ですが(引用:Cerebrovasc Dis. 2015 ; 40(0): 18–27.)、中心部は結合組織で構成され、周囲が心内膜組織で覆われた構造を呈しています。

・下図も原因不明の脳梗塞で指摘されたランブル疣贅の図です(引用:N Engl J Med. 2003 Dec 18;349(25):e24.)。

・通常は経胸壁心エコー検査では検出が難しい場合も多く、経食道心エコー検査が診断のゴールドスタンダードになります(下図はCerebrovasc Dis. 2015 ; 40(0): 18–27.より引用:大動脈の弁接合部に認める・右図は3D-TEE)。

塞栓症の原因

・複数のランブル疣贅が原因とする塞栓症のcase reportsは存在しますが、直接の因果関係を証明することはなかなか難しいのが難点です。
・大きさと塞栓のリスク関係に関して検討した文献は調べた限りではありませんでした。
・ランブル疣贅を有する群と有さない群での塞栓症発症を比較した後ろ向き検討はいくつかありますが、それらは相関関係を証明できなかったものも複数あり、本当に塞栓原となるか?に関しては結論は出ていないといえると思います。
・しかし、いかんせん数が少ないため臨床での現実的なアプローチとしては「他の塞栓原を除外し、ランブル疣贅しか残らない場合に除外的にランブル疣贅が塞栓症の原因」とするしかないのではないか?と思います。

治療・塞栓症の再発予防

・前向き研究やガイドラインは存在しない。
・偶発的に認めた場合は経過観察。
・抗凝固薬、抗血小板薬どちらが塞栓症再発予防に優れているか?の結論はない。
・抗血栓薬を使用していたも塞栓症を繰り返す場合は外科的切除を検討
・下のアルゴリズムは Cardiol Res. 2019;10(4):207-210 より引用。

参考文献
・Am J Case Rep, 2015; 16: 876-881
・Cardiol Res. 2019;10(4):207-210 LEsに関するreview
・Cerebrovasc Dis. 2015 ; 40(0): 18–27. LEsの有無と塞栓症に相関関係なし