研修医の先生から「なんでこの患者さん採血検査でCK上昇しているのでしょうか?」と質問があり、マクロCK血症と思われる症例を経験し勉強した内容を簡単にまとめさせていただきます。
1:CKに関して
CK(creatine kinase)はM型とB型の2種類から作られます(下図)。CK-MM:骨格筋、CK-MB:心筋(心筋全体の25%未満)という関係にあります(BBは臨床上問題になることは少ないため省略)。
2:マクロCK血症とは?
これらのCKアイソザイムとは別に存在する場合があるのがマクロCKであり、type1とtype2に分類されます。
・Type 1:CK-BBと抗体(多くはIgG)の重合体
・Type 2:ミトコンドリア型 悪性腫瘍で上昇する場合がある
マクロCKは通常のCKよりも半減期が長いため、血中から除去されるのに時間がかかり血中CK値が上昇する原因となります。
3:CK-MBの測定方法
・通常の検査方法(免疫阻害法):検査室で通常行うCK-MBの測定方法は、抗M抗体でMを阻害して残った部分をBを仮定してCM-MBとして測定しています。つまり、直接的にCK-MBを測定している訳ではなくCK-MBを間接的に測定しているということです。
・しかし、これはミトコンドリア型やマクロCKの存在が無いことを前提条件としています。この状況でマクロCK血症があると、マクロCKは抗M抗体でCK-MBと同様に阻害されません。このため、これらのマクロCKも検査上はCK-MBとカウントされてしまうことになります(実際にはCK-MBが上昇していないにもかかわらず)。これが検査上の問題点です。
逆にCK-MBの割合が異常に上昇している場合はマクロCK血症を疑うヒントになります。これらのマクロCKを検出するためには、免疫電気泳動法でたんぱく質の質量を測定すればわかります(下図参照)。