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  • 2021年8月26日
  • 2021年8月26日
  • 神経

先日お悩み相談コーナーを開設してみて(こちら)いくつかいただいた中から回答させていただきます。質問文はそのまま、もしくは個人情報に支障をきたす場合は多少変更して記載させていただいております。

質問1:「地方医学生です。東京で後期研修(内科)を考えています。母校に入局するという選択肢がない場合、後期研修先はどのように選べばよいとお考えですか?」

以下小生の回答

ご質問大変ありがとうございます。個人的にはどの内科に進むとしても内科全般の力を身に付けておくことは極めて重要と思います。確かに内科の中でも循環器内科や消化器内科のように手技の要素が大きい科は最初から手技の修練をした方が良いのかもしれませんが、そうでない場合は十分に内科を幅広く勉強できると良いと思います(初期研修2年間だけで内科を幅広くマスターすることは恐らく常人には不可能です)。

その点を踏まえた上でご質問の「後期研修先をどのように選べばよいか?」というご質問ですが、正直病歴と身体所見をきちんととれて総合内科的な見識を持ち合わせて教えることが出来る医師が院内に1人でもいれば、その病院で研修するのが良いと思います。

僕たちが臨床で最もしてしまうけれど同時に最も避けたいことは「まっよくわからないけどいいや」と臨床上の疑問点を流してしまうことです。もちろん毎回自分で調べることが出来ればそれでで良いのですが、正直1人で戦い続けるのは「いばらの道」になります。こうした臨床上の疑問にきちんと向き合ってくれる指導医がいるかどか?(正解をすぐにくれるという意味ではないです)が環境面では非常に重要と思います。「そんなの気にしなくていいよ」、「まあ〇〇でいいんじゃない」という回答ばかり返ってくる環境ではなかなか良いフィードバックを得られないかもしれません。だんだん書いていながら自分の首を絞めているようで耳が痛くなってきましたが・・・。

なので結局はあちこちの病院を見学してみるしかないと思います。私自身は学生時代にほとんど病院見学をしなかったことを結構後悔しています・・・。研修先は有名病院だから良いというものでも全くありません。尊敬できる医師に出会うことが出来たら色々話を聞いてみることが出来ればよりよいと思います。

質問2:「3年目医師です。今年から脳神経内科専攻として神経疾患の幅広さと奥深さを学ぶ毎日です。その幅広さゆえ報告数の少ない疾患の場合、診断において症候や病歴から自分も周囲の人間も含めて診断経験のない疾患も相手にすることがあります。 大学という環境に身を置いてすらそういった場面に直面することがありますが、先生はそういった状況でどのように診療を進めますか?」

以下小生の回答

ご質問大変ありがとうございます。もちろん私も経験不足でまだまだ診療したことが無い疾患が恥ずかしながら沢山あります。ご質問文の中で「周囲の人間も含めて診断経験のない疾患 」とありますが、質問の答えになるかわからないですが私は他大学まで含めて知り合いの医師にSNSなども介して「こういう症例の経験はありますか?」と結構直接聞いてしまいます(論文のcorresponding authorにメールしてしまう場合もあります)。勉強会や学会の後にこっそり演者の先生ご本人に突撃して聞いてしまいます。そういう意味でも自大学以外の先生と交流を持つことも重要かもしれません。私は決して他大学の先生方と交流が多い方ではないですが、少ない関係性の糸を利用して色々相談したりします。

それ以外のやり方では月並みですが(もう既に行っていただいているかもしれませんが)、case reportを読みながら自分の経験した症例と比較することが有用と思います。「あっこんなに急性の経過なんだ」とか「あっ髄液のIgG index正常範囲なんだ・・・」など色々思うところが出てくると思うのでそうやって妄想を広げていくことも勉強になるかなと思います。”Ocular neuromyotonia”という希少疾患を私は診療したときには本当にcase reportくらいしかなかったですが、「あっ自験例とそっくり!!」と思ったことが今でも記憶に鮮明に残っています。

希少疾患はこのような経験者へのコンタクトというアプローチとcase reportとの「にらめっこ」という泥臭さが求められますが、きっとこういう作業も臨床では重要と思います。希少疾患はなかなか難しいですが診断できれば自分が周囲で最もその疾患に対して詳しい人になることができます!もし参考になりましたら幸いです。