神経伝導検査 下肢

ここでは神経伝導検査の下肢に関して具体的な方法を解説します(施設毎に決まったやり方があると思いますのであくまで参考です)。上肢に関してはこちらをご参照ください。また神経伝導検査の総論・解釈に関してはこちらをご参照ください

脛骨神経(Tibial nerve)

神経根:S1(L4,5, S1,2,3)
記録電極:母趾外転筋(AH: abductor hallucis) 舟状骨粗面より1cm後方、1cm下
基準電極:第1趾基部
刺激部位
1:足首 内果とアキレス腱の間(記録電極から6cmの部位)閾値が高く、しっかりと電極を押し当てる必要がある(脛骨神経は屈筋支帯=足根骨を通過する)
2:膝窩 膝窩中央よりわずかに外側より

特徴
・CMAPの立ち上がりが陽性波になってしまう場合は記録電極を踵側にずらすか、舟状骨に近づけるようにすると良いことが多い。
・F波はほぼ100%出現する。
・坐骨神経は1:総腓骨神経と2:脛骨神経に分枝し、総腓骨神経が膝で外側、脛骨神経が膝で内側に位置します。

腓骨神経(Peroneal nerve)

神経根:L5
導出電極:EDB(短趾伸筋) 足趾を背屈させる際に外果の前方に認める筋肉(観察がしにくい場合もある)、総趾伸筋の外側に位置する
基準電極:第5指基部
刺激部位
1:足首 足関節背側(外果と内果の中点) しっかり刺激電極を深く食い込ませる必要がある
2:腓骨頭後下部(below fibula head) 唯一刺激強度を挙げてもcurrent spreadすることはないため、純粋な腓骨神経の評価をすることができる
3:膝窩外側(大腿二頭筋腱内側) 近位刺激すぎると脛骨神経にも刺激が乗ってしまうため注意

特徴
物理的な圧迫を受けやすい(common compression)神経であるため、明らかな器質的な原因がなくCMAP振幅が低下している例やF波が出現しない場合があるため解釈に注意が必要である。
・腓骨神経の解剖と感覚支配に関してはこちらをご参照ください。
・破格として副深腓骨神経(accesory deep peroneal nerve)を有する場合がある。足首刺激でのCMAP振幅が腓骨頭、膝窩刺激のCMAP振幅よりも小さいときにこの存在を疑い、外果後方(腓腹神経を検査する際に刺激する部位)を刺激すると検出することができる(下図参照)。

・前脛骨筋(TA)に導出電極をおいてbelow fibula headと膝窩刺激で評価する方法もある。

腓腹神経(Sural nerve)

神経根:S1
導出電極:外果後方とアキレス腱の間
基準電極:導出電極から3cm遠位
刺激部位:下腿中央から外側より(導出電極からの距離12cm) 腓腹筋の内側頭と外側頭の割れ目が刺激しやすい
*被検者が腹臥位の方が検査がしやすい


特徴
・運動線維を持たない、純粋な感覚線維のみを持つ神経。神経生検で生検する神経でもあるため、極めて重要。
・神経の走行上物理的圧迫を受けないため、感覚神経の評価に適している。
・評価部位は神経終末部を含まないため、CIDPやGBSなど神経終末部を特に攻撃する病態で初期に保たれる傾向がある(sural sparing)。
・腓腹神経の解剖、感覚障害の分布に関してはこちらをご参照ください。

内側足底神経(Medial panter nerve)

神経根:S1  *脛骨神経由来
導出電極:内果とアキレス腱の間(屈筋支帯の上方)
基準電極:導出電極から2-3cm近位(上方)
刺激部位:第1中足骨頭外側 近位(-), 遠位(+)

解説
・足底の皮神経は脛骨神経由来の内側足底神経外側足底神経に分けられ、内側足底神経は第1-3指、第4指の内側縁に分布し、外側足底神経は第4指外側と第5指に分布します。余談ですが手掌も足底も第4指が神経支配の境界となります(手掌は第4指で正中神経と尺骨神経が分かれます)。詳しい足底の感覚支配領域に関してはこちらをご参照ください。
・解剖学的に脛骨後内側(内果の後ろ)は足底への血管・神経の通路となり重要です(屈筋支帯にかこまれる)。

浅腓骨皮神経(Superficial peroneal nerve)

内側足背皮神経  *腓骨神経由来
導出電極:内果と外果の中点(足背)
基準電極:導出電極から2-3cm遠位
刺激部位:導出電極の14cm近位 近位(-), 遠位(+)

特徴
・浅腓骨神経は内側足背皮神経と中間足背皮神経に分岐し両者で足背の感覚を支配します。
・足背の感覚神経支配に関してはこちらにまとめがありますのでご参照ください。

*参考:基線がドリフトしてしまう場合の対応(電極ごとの問題点で分類)
1:記録電極の問題 皮膚との接触抵抗を下げる(アルコール綿などで皮脂をきちんと落とす)
2:刺激電極の問題 きちんと神経の直上で刺激する、刺激電極がフェルトの場合乾燥してしまっていないか?
3:接地電極の問題 乾いていないか?浮いてしまっていないか?


“神経伝導検査 下肢” への4件の返信

  1. 先生の神経伝導検査の結果のまとめはどの教科書よりもわかりやすいですね。後輩の教育に使用させて下さい。不勉強で申し訳ないのですが、この中では内側足底神経の検査は施行したことがないです。先生はどのような時にこの検査を追加していますでしょうか。また、話が逸れますが先生は皮膚温を器具を用いて調整したりしていますか(当院ではなかなかできていないのが実情です、やらなくてはと思うのですが…)。ご教授宜しくお願いいたします。

    1. とんでもないです、大変励みになるコメントを頂きありがとうございます!
      ・内側足底神経は腓腹神経よりも長い線維のため、length-dependentな病態では腓腹神経よりも先に障害されるはずですが、内側足底神経のSNAPが保たれているにもかかわらず腓腹神経のSNAPが障害されている場合はnon-length-dependentな病態も考慮するようにしております。また脛骨神経の感覚成分としての評価としても使用している点と、足根管症候群での評価として利用しております。
      ・当院では神経伝導検査の皮膚温度に関して細かくご指摘いただくので、可能な限り調節しておりました(もちろん出来ていない場合もあったのですが・・・・)。冬はホッカイロを使用したりして私は対応しておりました(笑)。温度調節のための特殊な器材などは使用できておりません。
      ご参考になりましたら幸いでございます。

  2. 内側足底神経のSNAPが保たれているにもかかわらず腓腹神経のSNAPが障害されている場合はnon-length-dependentな病態も考慮する→恥ずかしながら全く知りませんでした…大変勉強になります。明日からそのような観点で患者さんを診てみようと思います。皮膚温の対応についても有難うございました。大変参考になりましたm(_ _)m

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