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Cerebellar Bottom-of-Fissure Dysplasia

訳わからないくらいマニアックな内容ですみません。今回は完全に今一緒に診療しているチームのメンバー向けの内容で恐縮です・・・・。私の尊敬する放射線科の先生が教えてくださった内容です。

■”Cerebellar Bottom-of-Fissure Dysplasia”の提唱 Cerebellum (2016) 15:705 – 709

“Cerebellar Bottom-of-Fissure Dysplasia”(以下BOFDと略称を使用します)は「小脳半球下面を中心に分布する、小脳溝の底の小脳皮質(灰白質)の異形成」のことを表します。この論文で7例の報告をまとめ、新たな画像概念として命名されたものです。

ここでの7例は出身はスイス3例、ドイツ3例、コソボ1例、年齢は7ヶ月~18歳です。以下にMRIを撮像した理由、年齢などのまとめを掲載します。

画像上の特徴は小脳溝の底の小脳皮質に左右対称性にT2WI/FLAIR高信号、T1WI低信号の病変を複数認めます。部位としては小脳虫部はspareし、外側と下面を中心に分布します。造影効果は全例で認めず、撮像された範囲ではDWIやSWIでも信号変化は指摘できませんでした。また小脳白質や脳幹、テント上には病変・信号変化は認めませんでした。何例かはMRIのフォローアップが行われていますが、いずれの症例でもフォローアップで小脳皮質病変に変化は認めませんでした。

またこれらの症例では全例で小脳失調は認めず、またこの様に形態学的な変化をフォローアップでも認めないことから明らかな病的意義はないかもしれないとされています。

■BOFDのetiologyに関して研究した論文 AJNR Am J Neuroradiol 41:923 – 28 May 2020

上記のBOFDの報告を受けて、同様に小脳溝の底の皮質にT2WI高信号を認める23例をまとめたものです。ここではetiologyは低酸素虚血障害17/23例、PRES3/23例、不明3/23例となってており、20/23例ではテント上に分水嶺領域の障害を認めたしており、小脳分水嶺領域の障害と対応しているのではないか?と考察しています。また過去の画像で正常な小脳を呈しているものもあることから、congenitalな原因は考えにくいのではないか?と考察しています。

実際の画像は以下の通りです。

まだまだ解明されていない点が多いため今後の知見に期待が持たれます。