Guillain Barre症候群 予後予測

患者さんご本人、家族へのギラン・バレー症候群の説明をするにあたっては大まかな機能予後と道筋を示すことが求められます。その際に参考となるのが予後予測のスコアリングです。ギラン・バレー症候群では機能予後に関するスコアリングとしてmEGOSが、人工呼吸管理となる予後評価に関してEGRISの2つが提唱されており、ここで簡単に紹介させていただきます(ギラン・バレー症候群の一般的事項に関してはこちらをご参照ください)。

機能予後の評価

■EGOS

入院2週間後の状態から6ヶ月後の機能予後を推定するために提唱されたものが、EGOS(Eramus GBS outcome scores)になります(Lancet Neurol 2007; 6: 589–94)。以下の通り年齢、下痢を4週間以内に認める、2週間後の時点のGBS disability scoreからスコアリングを行います。EGOSではGBS disability scoreの評価が入院2週間後であり、来院直後の状態ではないため注意が必要です。このため受診直後の状態で予後評価が出来ない難点があったため、以下のmEGOSが次に提唱されるようになりました。

■mEGOS

上記のEGOSは入院後2週間時点で予後を評価する方法ですが、入院直後の早い段階で予後を評価することはでいないか?というために提唱されたのがmEOGS(modified Erasmus GBS outcome scores)になります(基本実臨床ではEGOSよりもmEGOSをカルテに記載することが多いと思います)。これは397人のギラン・バレー症候群患者を解析し、以下の通り年齢、下痢の先行があるかどうか?、来院時のMRC sumscoreからスコアリングして評価を行います(Neurology ® 2011;76:968–975)。

mEGOSのスコアに基づき4週後、3ヶ月後、6ヶ月後の歩行困難をグラフにしたものが下図になります。

やはりこれもオランダ人のコホートを使用しているため、このまま日本人にapplyできるかどうか?に関してはまだ疑問が残りますが非常に参考になるデータと思います。

呼吸不全に伴う人工呼吸管理が必要となるかどうか?

神経疾患で急性呼吸不全を呈する疾患の代表がギラン・バレー症候群で、この他に重症筋無力症のクリーゼやALSのrespiratory onsetのものなどが挙げられます。神経筋疾患による呼吸不全におけるVC(ml/kg)と呼吸生理の対応関係を表したピラミッドが有名で(この分野の権威であるRopper先生による)、以下の通りです(図はN Engl J Med. 1992 Apr 23;326(17):1130-6.より引用)。

VC<30ml/kg:咳嗽が弱くなり気道分泌物が貯留
VC<20ml/kg:無気肺や低酸素が出現するようになる
VC<10ml/kg:低換気で二酸化炭素貯留

Guillain Barre症候群でもこの経過をたどるため早期の挿管・人工呼吸管理リスク評価が重要です。

■EGRIS

以下の進行のスピード(筋力低下発症から病院受診までの期間)、顔面もしくは咽頭筋力の低下(受診時点)、MRC sum score(受診時点)の3項目をスコアリングし、受診後1週間以内に人工呼吸管理が必要となるリスクをスコアリングしています(Ann Neurol 2010;67:781)。この研究では呼吸機能検査の結果や電気生理検査の結果が十分に集められなかったため、これらの項目に関しては検討されていません。機能予後で重要であった年齢や下痢の先行はEGRISには組み込まれていない点も興味深いと思います。

この報告ではderivationの377人では22%で人工呼吸管理が必要となり、validationの188人では14%が人工呼吸管理が必要となっています。まとめるとlow risk群(EGRIS 0-2):4%, imtermediate risk群(EGRIS 3-4):24%, high risk群(EGRIS 5-7):65%となります。日本は軸索障害型が多く、人工呼吸管理が必要となるGBSは10%程度にとどまるのに対して海外の報告では脱髄型が多く(AIDP)人工呼吸管理が必要となる症例が20-30%程度と報告されているため、この結果をそのまま日本人のapplyできるかどうか?に関してはわかりませんが、いずれにせよ重要なデータと思います。

人工呼吸管理が必要となる予測因子 Crit Care Med 2003; 31:278–283

722人のギラン・バレー症候群患者さんのうち313人(43%)が人工呼吸管理が必要となり、予測因子をまとめた報告です。発症から受診までが7日以内(OR 2.51)、起立不可能(OR2.53)、肘が挙げられない(OR 2.99)、頭を挙上できない(OR 4.34)、咳嗽が出来ない(OR 9.09)、肝逸脱酵素上昇(OR 2.09)が予測因子として挙げられており、1つ以上の該当でICU管理を推奨しており、4つ以上の該当で85%以上で人工呼吸管理が必要となるとされています。

■末梢神経障害による呼吸不全のreview Journal of the Peripheral Nervous System 15:307–313 (2010)

ここで紹介されている基準は以下のmajor criteria1つ以上該当もしくはminor criteria2つ以上該当する場合はたとえ呼吸困難の症状がなくとも人工呼吸管理にするべきとしています。
Major criteria
・PaCO2>48mmHg
・PaO2<56mmHg
・VC<15ml/kg
Minor criteria
・咳嗽が十分ではない
・嚥下障害
・無気肺

Guillain Barre症候群患者さんにおいては挿管・人工呼吸管理のタイミングが遅れて良いことは1つもなく、きちんとリスク評価をして早期介入することが重要です。Guillain Barre症候群の患者は入院当初は呼吸状態が大丈夫にみえたとしても、入院後急激に呼吸障害がくる場合があり(夜間に急変して挿管というケースもたびたびあります・・・)、このようなリスク評価を事前に行い適切なタイミングで挿管人工呼吸管理に移行することは管理上とても重要だと思います。急変してから挿管ではなく事前の準備が重要です。

“Guillain Barre症候群 予後予測” への3件の返信

  1. 大変勉強になります。予後予測といって良いか分かりませんが、私はGBSの患者さんの診察でよくSBCT(single breath counting test)をベッドサイドで施行しています。1回の息継ぎで10まで数えられる時はVC=1L、20まで数えられればVC=2L…といった具合で大まかに計算可能でだいだい合っている気がします。SBCTが10ぐらいになる頃に人工呼吸器を着けるかどうか他の所見と併せて総合的に判断しています。

    1. SBCT(single breath counting test)に関してご教授いただき大変ありがとうございます!
      10が1L,20が2Lと数字も対応していて覚えやすいですね!
      私も早速臨床で使わさせて頂ければと思います。

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