感覚障害のみを呈する脳梗塞 Pure sensory stroke

感覚障害のみを呈する(つまり運動症状を呈さない)脳梗塞としては視床が有名ですが、脳幹部の限局性梗塞でも感覚障害のみの脳梗塞を呈する場合があり注意が必要です。

■Pure sensory strokeの疫学に関して J Neurol (2005) 252:156–162

この研究では99例のpure sensory strokeの症例があり、全脳卒中の4.7%、脳梗塞の5.4%、ラクナ梗塞の17.4%を占めると報告されています。障害部位としては視床56.5%と最多であり、内包6%、頭頂葉5%、放線冠4%、橋3%、大脳皮質(特に側頭葉を含む)2%と報告されています。機序としてはラクナ梗塞が88%と最多であり、非ラクナ梗塞ではアテローム性(n=8)、原因不明(n=1)、頭蓋内出血(n=3 3%)と報告されています。 

脳幹梗塞によるpure sensory stroke

以下では特に脳幹梗塞でのpure sensory strokeを取り上げたいと思います。私は脳幹部梗塞でのpure sensory strokeは3例経験がありますが、臨床像だけから診断するのはかなり難しい印象が毎回あります。

まず自験例を1例紹介させていただきます。70代男性が受診前日に突然発症の右上下肢しびれを呈して受診しました。異常感覚の範囲は右上肢手関節以遠(特に掌側のしびれ)と右下肢くるぶし以遠でのしびれで、体幹や顔面は含まれませんでした。神経学的所見では唯一振動覚が上肢10/16sec、下肢5/10secと右上下肢で左右差のある低下を認めましたが、表在感覚には問題ありませんでした。頭部MRI画像(左:DWI, 右:ADC map)は以下の通りで、橋背外側よりの急性期脳梗塞像を認めました。

私は今まで脳幹部でのpure sensory strokeを3例経験していますが、いずれも体幹部には感覚障害(異常感覚を含めて)を認めませんでした。脳幹梗塞によるpure sensory strokeに関して気になったので調べてみます。

■脳幹部脳卒中によるpure sensory stroke17例のまとめ Stroke 1997;28:1761

脳幹部脳卒中(梗塞11例、出血6例)によるpure sensory stroke17例をまとめた報告。どの感覚が障害されているか?に関しては深部感覚のみの障害:7例、外側脊髄視床路のみの障害:1例、両者の障害:3例と報告されています。

脳幹部~脊髄では外側脊髄視床路と内側毛帯は距離が離れて走行しています。このため、両者がそれぞれ別々に障害されることがある点はひとつ脳幹梗塞によるpure sensory strokeの特徴として挙げられると思います(視床梗塞では通常このような感覚の解離はおこらない)。また内側毛帯は傍正中部に位置していることから、特に血管障害で障害されやすいことを反映していると思います。

またこの報告では口周囲が両側障害される症例が5例報告があり、この原因としては橋レベルでは下図のように内側毛帯が左右いずれも内側で接近しており、かつ内側は体部位局在でrostalに位置するため両側性に障害されうるとされています(下図Bに該当)。これだけでなく、下肢に限局した感覚障害などを呈する場合もあり、脳幹部梗塞による感覚障害は体部位局在を反映した限局的な感覚障害を呈する場合があることもひとつ注意点と主ます。

以下は各症例の画像です。

以下が各症例の臨床情報まとめです。

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■参考:その他の脳幹部梗塞によるpure sensory stroke Neurol Clin Pract. 2017 Aug;7(4):e35-e36

67歳女性が突然発症の左下肢(膝下)感覚障害にて受診した症例。画像は下図の通り。

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