中脳梗塞 midbrain infarction

ここでは中脳の解剖と中脳に限局した脳梗塞(pure midbrain infarction:つまり中脳以外の部分には梗塞巣を認めない)に関してまとめます。

中脳の解剖・血管支配

中脳の構造は下図のようになっています。
動眼神経核:中脳の脳神経で最も重要な脳神経は動眼神経です。内側に位置しており、脚間窩へ走行しています。
大脳脚:内包を経由した下降性投射線維の集合体です。皮質脊髄路(錐体路)の線維が中央部にあり、外側がcaudal、内側がrostalの局在があります。また皮質橋小脳経路(cortico-ponto-cerebellar tract)の線維もあるため、同部位が障害されると小脳失調をきたします。
黒質:ドーパミン産生工場で、パーキンソン病などで重要になります。
内側毛帯:橋レベルではその名の通り最も内側に位置していますが、視床に投射するため、橋と視床の途中に位置する中脳レベルでは内側毛帯はやや外側に位置しています。
外側脊髄視床路:これは延髄レベルでも外側に位置しており、中脳レベルでも視床へ投射するためそのまま最外側に位置しています。

血管支配に関しては下図の通りです。

脳底動脈、PCA、SCAから直接中脳へ栄養する血管の供給があります。対応する血管の日本語名がよくわからず英語のままの記載で恐縮でが、内側・外側・背側枝の3つに大きく分類され、内側は吻側と尾側でそれぞれsuperiorとinferiorがあり、またinnnerとouterに分類されます。まとめると下図(下図は尾側のためinferor medial mesencephalic branchが載っています)の通りです。
1:内側:Inferior/superior medial mesencephalic branch
 ・innner inferior/superior medial mesencephalic branch
 ・outer inferior/superior medial mesencephalic branch
2:外側:lateral mesencephalic branch
3:背側:dorsal mesencephalic branch

中脳梗塞の臨床像

以下は中脳に限局した脳梗塞(ここでは以下中脳梗塞と称します)40例をまとめた文献より引用させていただきます(NEUROLOGY 2005;64:1227–1232:おそらくpure midbrain infarctionとして最も症例数が多い報告です)。中脳梗塞は全脳梗塞の0.6%とやはり頻度としてはまれであるがわかります。

ここでは中脳梗塞を梗塞部位の解剖から大きく4つに分類しています。先に解説した中脳の解剖、血管支配と照らし合わせて確認していただければと思います。
A:anteromedial group
B:anterolateral group
C:lateral group
D:posterior
group

以下にそれぞれの特徴を記載します。

■Anteromedial group

18/40例が該当し、分類された中で最も多いものです。解剖学的には動眼神経核・線維、MLF、赤核、大脳脚の内側が障害されます。臨床症状としては眼球運動障害が最も多く89%に認め(動眼神経麻痺9例、MLF症候群5例、その他2例)、失調も89%で認めています。四肢の筋力低下を示した症例はなく、感覚障害は39%で認めました(口周囲もしくは手の領域に限局したものが6例:手口症候群の分布→これは体部位局在が内側はrostalであることと対応していると思われます)。Anteromedial群は更に、病変が皮質下に限局しているものはsmall vessel diseaseと対応(78%)し、病変が内側表層を含むものはlarge vessel diseaseと対応(78%)するとされています。下図がanteromedialのMRI画像です。

■Anterolateral group

11/40例が該当し、anteromedialの次に多いものです。解剖としては大脳脚を中心に障害します。臨床症状としては片側麻痺を30%、片側失調を70%に認めます(両側性失調はなし)。ataxic hemiparesisの臨床像も呈します。片側麻痺を呈したのが30%しかいないことの原因として、錐体路の線維が大脳脚では水平に広く分布していること(つまり延髄などと比べて密度が低いこと)が原因かもしれないと考察しています。眼球運動障害を呈した症例はありません。機序はアテローム性が多く(82%)、PCA病変が8例(P2狭窄6例、P1狭窄1例、両側PCA近位部閉塞1例)とされています。下図がanterolateralのMRI画像です。

■Lateral group

2/40例が該当します。解剖としては内側毛帯を障害します。臨床症状としては感覚障害が特徴で、麻痺や眼球運動障害を呈した例はありませんでした。”pure sensory stroke”の鑑別として重要と考えられます。下図がlateralのMRI画像です。

この他分類が出来ない比典型病変が2例、両側性病変が1例、anteromedial + anterolateralの合同例が6例で認めています。posteriorのみに分布するものは指摘できませんでした。また脳梗塞の機序として心原性はまれであることがわかりました。

以下ではそれぞれの臨床症状に関してまとめます。

■動眼神経麻痺 35%

眼瞼下垂は通常伴いますが、瞳孔障害は2例のみで少ないです。
眼瞼下垂:両側性眼瞼下垂は2例報告されており、上眼瞼挙筋への神経核は両側性支配なので同部位が障害されたことが示唆されます。
上転障害:また対側の上転障害は4例で報告があり、上直筋への神経は対側支配であることを反映しています。
MLF症候群:5例で認めています

■失調 68%

失調が中脳梗塞全体でみると最多の症候です。皮質橋小脳路(cortico-ponto-cerebellar pathway)の線維が大脳脚に走行していることが関係しています。

■麻痺 23%

大脳脚に錐体路が走行していますが、麻痺は23%にしか認めていませんでした。

■感覚障害 43%

感覚障害は通常体のある部分に限局していることが多いとされています。上記の通りlateral groupで特に重要です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。