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分水嶺領域の脳梗塞 watershed infarction

0:分類と解剖

2つの主幹動脈の境界部分を分水嶺領域(watershed area/ border zone)と表現し、同部位に脳梗塞をぶきたす場合があります(脳梗塞全体の約10%を占めるとされています)。分水嶺領域は“external(cortical) border zone”“internal(subcortical) border zone”の2つに大きく分類されます。具体的な分水嶺領域の分布は下図の通りです(青字:external border zone, 赤字:internal border zone)。

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これを冠状断でみると下図のようになります(元図はNeuropathology 1999; 19, 93–111より、分水嶺領域は臨床神経 2020;60:397-406 Fig8を参照)。

1:External(cortical) border zone: EBZ or CBZ

定義:ACA, MCA, PCAの境界領域に生じる梗塞
原因:塞栓性(>血行力学性) 他の場所よりもhypoperfusionのため、塞栓がwashoutされないことが原因として考えられている(Arch Neurol 1998;55:1475-1482.)。必ずしも血行力学性機序によらないとされています。
*血行力学的な原因の場合は内頚動脈狭窄が多く、半卵円中心付近(皮質枝間の境界領域)に梗塞を来す場合が多い。
形態:楔形(wedge-shaped)や卵円形(oval)の梗塞域を呈します *皮質梗塞を伴う場合が多い
・前頭葉皮質:ACAとMCA
・後頭葉皮質:MCAとPCA
・傍正中皮質:ACAとMCA

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2:Internal(subcortical) border zone: IBZ

定義:穿通枝と髄質枝(ACA, MCA, PCA由来)の境界域に生じる梗塞
原因:血行力学性
形態:ロザリオ様(rosary)やchain-like *ロザリオは西洋の数珠のことです。
・レンズ核線条体動脈とMCAの境界域(最多)*中大脳動脈狭窄(放線冠:LSAとMCA髄質枝の境界領域)が多い。
・レンズ核線条体動脈とACAの境界域
・Heubner動脈とACAの境界域
・前脈絡叢動脈とMCAの境界域
・前脈絡叢動脈とPCAの境界域
*internal border zoneの梗塞はexternal border zoneの梗塞よりも神経学的予後が悪いことが指摘されている。

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*external + internal border zoneいずれもある場合はhemodynamicな機序が働いている可能性が高い。

文献

■分水嶺領域の梗塞を比較した研究 Stroke. 2006;37:841-846

分水嶺領域梗塞を比較検討(Internal border zone梗塞45例、external border zone梗塞75例)した論文では、以下の特徴が指摘されています。
・internal border zone梗塞:形態はロザリオ様が多く、主幹動脈の閉塞or狭窄を認める(MCA狭窄が多い)
・external border zone梗塞:形態は卵円形や楔形が多く、皮質領域の梗塞を随伴しすることが多く、血管狭窄は認めない場合が多い

血管狭窄の程度と血管の種類をまとめたのが下図になります。

具体的な梗塞部位をマッピングしたものが下図です。

参考文献
・RadioGraphics  2011; 31:1201–1214:分水嶺領域梗塞に関して最もよくまとめられた文献と思います。綺麗なシェーマが付いているためわかりやすいです。
・臨床神経 2020;60:397-406 血管構造に関して非常に詳細にまとめられた素晴らしいreviewです。
・Stroke. 2006;37:841-846

管理人更新記録 2021/6/23